第十二楽章 赤い橋
12-2小節
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ろうとなんてしなかった。ビズリーがリドウを殺そうがジゼルを殺そうがどうでもよかった。どちらかが死んで、ヴェルが悲しむと知っていても気にしなかった。一体何が俺をここまで博愛主義にしてしまったんだか。
“ユリウスせんぱい!”
何が? 決まりきってる。あの底抜けに明るくてポジティブな部下だ。
あいつがきっかけで、あんな暖かい時間を、場所を、ルドガー以外に知ってしまったんだ。
今更、弟だけでよかった俺には戻れない。
ああ、認める。癪だが認めてやるさ。
リドウ。ヴェル。そしてジゼル。4人でいられた時間はまぎれもなく俺の宝物だった。だからこの命、お前たちのために捨ててやる。
ルドガーを何とか引き剥がして、剣を構えようとした時だった。俺のGHSが振動したのは。
こんなタイミングで電話? 誰から? ――いや、誰からであれ、もう出る必要はないか。今から死のうって俺には答える言葉なんてない。
呼び出し音が収まって、留守電に切り替わる。
『室長。ジゼルです。今すぐその剣から手を離してください。さもないとそちらの埠頭に配置した部下にルドガーを狙撃させます』
なっ…! あいつ、何で俺がしようとしたことを知って。そもそも一体どこから。
「兄さん、今の電話……」
分かってる。出て直接問い詰めないことには始まらない。ジゼルはやると言ったら本気でやる女だ。
「ジゼル! どういうつもりだ。ビズリーに付いたのか」
『わたくしがそうしないのは室長がご承知でしょう? ――よかった。出て下さって。今、マクスバードのエレン港におりますの。社長と、エルちゃんも一緒です』
「どうしてビズリーのそばにいるんだ! そっちにいたら、お前」
『《橋》にされてしまうのに?』
くす、と。電話の向こうでジゼルが笑った。笑ったんだ、こんな時なのに。
『おっしゃる通りですわ。室長が犠牲になる必要はございません。《橋》にはわたくしがなります』
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