第15話〜策略の牢〜
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繋ぐ。すぐ近くでコール音が水路に鳴り響いた。
『こちらはケイン・ロウハート』
『・・・マジかよ』
ケインが応答したことによる暫しの沈黙。増援が期待できないことを知り、動揺している者もちらほらいるようだ。
「う、狼狽えるな!優位性はこちらが保っている!!かくなる上はユーシス様ごと武装解除を・・・!」
「その必要はなかろう」
一日ぶりに聞いた青年の穏やかな声。声の主の姿を見た兵士らは各々が驚きを呟きにしていた。彼らの驚きももっともなのだろう。現れたのはアルバレア公の代理で帝都へ行ったはずのルーファス・アルバレアであったのだから。士官学院からの昼過ぎに連絡が入り、飛行艇で戻ってきたそうだ・・・サラ教官とともに。父たるヘルムート公には話をつけたらしく、兵士には戻るように指示をする。それに服従する形で彼に敬礼をし、足早に撤収していく領邦軍。
「・・・どうもありがとうございます。彼らは牢屋にぶち込まれなくてよかったですね」
「フフ、領邦軍も日々の訓練は決して怠っていないのだが、君には物足りなかったかな?・・・強い兵士を持つ“彼”が羨ましい限りだがね」
「ルーファスさんも実は結構な実力者ですよね?」
「卿ほどではないとは思うが・・・」
お礼と同時に若干皮肉めいたことを言っているケインだが、ムキになる様子もなく賞賛するルーファスに器の広さを感じさせられる。彼らのやり取りは延々続く様に思われたが、サラが口を挟む。
「ケイン?単独行動はしないように言っておいたはずよね?」
「マ、マキアスも一緒でしたって・・・少なくとも途中までは」
「その後、『ちょっとあいつらシメてくる』とか言って詰所に単身で侵入していましたよ」
「そうそう、そうなんですよ。あいつら意外と頑固で・・・っておい!!」
眼鏡のブリッジを押し上げ真面目にありのままを報告するマキアスに対して、ケインも一時は同調してしまう。普段はポーカーフェイスであるケインは嘘をつくのだけは何故か苦手だ。しゃれた冗談はさらっと言うのに根は真面目なのだろう。マキアスはそんなことを考えながらケインがサラと対話をしているのをBGMにしてルーファスと話すことに。
ルーファスがトールズ士官学院に三人いる常任理事の一人であることや、コンタクトを取ってきたサラを途中で拾って飛行艇でこちらへ来たことなどを知る。彼が学院理事を務めていた真実を知った時のユーシスは、開いた口が塞がらない様子で脇腹を抱えていたのは内緒である。
「いや、しかしまさか私の留守中にあんな無茶を父が押し通すとは思わなかった。相当頑なではあったが・・・今回ばかりは引いてもらったよ。理事として生徒の不正な拘束は認められないからな」
「兄上・・・」
「ご配慮、感謝しま
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