暁 〜小説投稿サイト〜
横浜事変-the mixing black&white-
殺意はナイフと拳銃と言葉で紡がれる
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が、要は感情を心の裏側に押し込み、淡々とした口調で話しかけた。

 「まさかとは思ったけど、やっぱり暁だったんだな」

 「っ……」

 単純な事実を吐いた要に、眼前のクラスメイトは表情を硬くし、息を飲んだ。それは友達に嘘を吐いていた事への焦りか、自分の素性が露わになってしまった事への焦りか――

 ――どっちでもいいけどな。

 そして、要はゆっくりと結論を言葉に乗せて呟いた。

 「……蛇の道は蛇って言ってさ、同類は結局同じところまで堕ちちまうんだ、よっ!」

 語尾を放つのに合わせて要は思いきり地を蹴った。左手に持ったナイフを利き手に持ち替え、分かりやすく振り被る。それを見たケンジは驚いた顔をして、それからリズミカルに後ろへ下がった。

 だが、要の攻撃は避けられたから止まるわけではない。ナイフは空を切ったが、彼の身体は膝を地に着く寸前の状態で停止している。そこから両脚に力を込め、学生とは思えない爆発力で前方に飛び込んでいく。ナイフの切っ先を前に向け、勢いに乗ってケンジの腹部を貫く――事にはならなかった。

 ケンジはすぐに銃を手から離し、手ぶらになったところでまず身体を左横にスライドさせた。そして、要のナイフを持つ腕を片手で掴んで、真横に引く事でバランスを崩した。軸足のみになった要のそれを左足で捌き、彼を転ばせたのだ。

 突然の反撃に成す術もなく地面に倒された要。もろに背中と腰を打ったが、すぐに立ち上がる。そしてある程度の間合いを取るとケンジに話しかけた。

 「そういや合気道やってたんだっけ。反射神経は平均以上ってわけか」

 「田村君……」

 「ちなみに和解はできない。これは学校内での話じゃないからな。俺は俺の世界を守るために戦ってるんだ……って、さっきまでは言えたよ」

 「え?」

 「前に、どうして周りが一歩引いた態度取るんだって話したろ。俺はあの答えを知ってる」

 「どういうこと?」

 ――そんな素顔丸出しじゃ、後ろから刺されるぞ。

 心の奥底でそう呟き、裂綿隊に属する少年は敵であるクラスメイトに解答を教えた。

 「それはな、俺ら自体が周りから浮いてるからなんだ。それなのに俺は他人のせいにして、反対にお前は最初から受け入れた。本当にそれだけの話だよ。現実は平等じゃない。それを一番痛感した気がする」

 「……でも、そうだとしても僕らは悪くないと思う」

 「は?」

 ――何言ってるんだ、こいつ。

 自分が言った事が通じていないんじゃないか、と要は呆れそうになるが、眼前の少年は『こういうとき』は素だった。

 「運命には逆らえない。けど、願うのは許されることだと思うんだ。僕には幼馴染がいたけど、君にだって一人ぐらいいただろ?一緒に
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