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Shangri-La...
第一部 学園都市篇
第3章 禁書目録
七月二十七日:『狂信者』U
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呵呵(かっか)────苦しゅうない。(わらわ)にもその硝子の酒を上納するがよいぞ」

 呼ばれたからか、姿を現した“悪心影”……市媛。レイヴァンの対面のソファに、どっかりと腰を下ろして。更に『脚で』もって、レイヴァンが空けたままでまだ呑んでいなかった瓶を掴み取る。
 刹那、背後から風が吹いた。そうとしか形容できない速さで、セラは市媛に肉薄する。

「────下がれ、下郎。誰の許しを得て拝謁するか、風王の眷族(ろーど=びやーきー)風情が」
「────それはこっちの台詞だ、魔王の代弁者(メッセンジャー)風情が……頭に乗ってんじゃねぇ!」

 脇差し『宗易正宗』と拳銃『コンテンダー・アンコール』を突き付け合う、和装の娘と洋装の娘。微塵も揺らがない濡羽烏の黒髪と、風の流れに揺蕩う翡翠めいた色味の銀髪。見下しながら見上げる紅い瞳と、睨み付けながら見下ろす白金の瞳。
 一触即発、正にそんな陳腐な表現がぴったりのスイートルーム。しかし、均衡とは崩れるもの。

「それで? まさかとは思うが……まだグラーキに挑む気か?」
「勿論。殺す、この世から消す」
「ソイツは無理だ。何故なら、『クトゥルフ神話』は他の神話とは違う。あれは『人間の集団妄想』で成り立ってるんだ。人が滅ぶか、忘れ去るまでは消えねぇよ」
「成る程ねぇ……」
「「…………」」

 そんな二人をそっちのけで、瓶麦酒を口にしながら会話しているレイヴァンと嚆矢。その様に、先に得物を納めたのは市媛。
 呆れたように、脇差しを鞘に戻して。代わり、何処からともなくは瓶詰めの金平糖(コンペイトウ)を取り出した。

「阿呆らしいのう……あちらはあちらで盛り上がっておるようじゃし。どうじゃ、呑むかえ?」
呑まねぇよっ(Fuck you)! てか、伯父貴(オジキ)! 敵と盛り上がんなよな!」

 以前、嚆矢にしたように金平糖を勧める。無論、脚で。なのでセラは気分を害したらしい。
 つかつかと、レイヴァンの方に行ってしまった。代わりとでも言うように。

『てけり・り。てけり・り』
「おう、くれてやろうぞ。ほれ。ふ〜む、これが麦酒(えーる)という奴か」

 寄ってきたショゴスに餌付けする市媛。我関せず、とばかりに麦酒に舌鼓を打ちながら。
 それに、我関せずとばかりに。嚆矢はレイヴァンに最後の一言を。

「なら、力を貸してくれ。あんた程の魔導師なら、それが出来る筈だ」
「出来ねぇ、とは言わねぇが……俺らは慈善事業の『教会』じゃなくて、資本主義に基づく『協会』だ。見合う得がなきゃ、動かねぇ」

 それこそ、米国の真髄。資本主義そのもの。分かってはいたが、やはり一筋縄ではいかない。
 言い、テーブルの上にバシンと叩き付けた『モノ』。その、悍ましき
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