コヨミフェイル
007
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。せめてその一部でも報いさせてくれ」
それほどたいしたことをやっていないと僕は思っているのだが、神原はどうも僕に恩義があると思う節がある。
神原に限らず、他の皆にもあるように思える。
皆はただ一人で助かっただけなのだ。
それに僕は何一つ一人で解決できたことはないし、本当に解決できたのかも疑わしい。
だが、その誤りを正すことは徒労に終わるのは知っているし、時間もないので、触れずに
「わかったよ」
と一言で答えた。
「では」
プツッという音を確認して、すぐに別の携帯電話にかけた。
「お待たせしました、羽川です。阿良々木くん?どうしたの?」
羽川の心配そうな声に高ぶる気持ちを押さえて用件だけを伝える。
意外と僕が四六時中興奮しているというのは事実なのかも知れないな。
……それは横に置いて。
「すまない、羽川。急用が出来たから、もしかしたら羽川のもとには行けない。行けなかったときの埋め合わせは必ず何らかの胸に関する形でする。だから、頼む。見逃してくれ」
「胸に関する形でする埋め合わせならいらないし」
少し羽川の語気に怒りを感じないでもなかったが、気のせいだろう。
「それなら下着に関する形で……」
「阿良々木くん」
「はい」
「怒るよ」
「……ごめんなさい」
自分で急いでいると言っておきながらまるで急ごうとしていないではないかとみんなは思っているようだが、大間違いだとだけ言っておく。
これは、そう、挨拶なのだ。
日常生活において挨拶は必要最低限の礼儀作法だ。それを欠いては水なんとかくんの家族を助ける助けない以前の問題になり兼ねない。
だから、これは必要なのだ。
「ただのサボタージュじゃないってことぐらいわかってるから別にそこまで気にしなくてもいいよ、阿良々木くん」
羽川は小さくため息をついて言った。
「ん?」
「瑞鳥くんの家族が失踪したのをテレビのニュースでついさっき知って、火憐ちゃんのことだからきっと彼を捜して回っていると思ったの。それで、火憐ちゃんの携帯に電話をかけてもでないと思って、阿良々木くんにかけようとしていたところに阿良々木くんから電話がかかってきたって感じ。だけど阿良々木くんに電話をかけたところで私にできることはないよね。もう、神原さんには出動要請は出したのでしょう?」
羽川とは友達でいるつもりだが、やはり羽川の聡明さにはいつでも感嘆させられる。
しかし、同時に思い出すことがある。
異形の羽を持つ少女。
障り猫。
その聡明さでことごとく怪異のオーソリティの策略を破り、苦しめた。
半月前のことだが、今では昔のことのように思える。
あの日を機に羽川は変わった。多分いい方に変わったのだと思う。
そうであってほしいだ
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