赤の少女が求めしモノは
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暖かい陽ざしが延びる城壁の上、思考に耽るモノが、一人。
凛……と場を凍らせる程の覇気を纏い、見張りの兵が遠くに居るだけのその場所で、華琳は空を眺めていた。
桂花の到着は今日を予定されている。明は軟禁してあるが部屋から出る素振りもない。
情報では暗殺技術にも特化しているとのことで、一応の警戒はしていた……が、明は手洗い以外で一切外に出ようとしなかった。
捕えてからもう三日経つ。しかし華琳はまだ会いにいっていない。ただ、機を待っていた。
起きて直ぐに何がしか話をするのが通常ではある。華琳の眼前に連れて来て、こちらに降れと言えばいい。
大切なたった一人の少女を救い出したいが為に袁家に所属する明に対しては、夕をこのまま殺す事も辞さないと脅しを掛けるだけでも効果があるだろう。
されども、華琳はしない。そんな単純明快な手を打つ事は無い。これから攻める方法を鑑みれば、不測の事態は少しでも排除しておくべきと考えて。
軍師達との軍議はもはや終わった。次に取るべき行動も決まっている。その中で一番の問題は……明の心をどれだけ屈服させられるか。どうなっても負けるつもりは無いが、優劣の大きなところが其処に掛かっている。
明が嘘を付く可能性は十分にある。否、それこそが夕の仕掛けてきた策であると理解を置いている。
袁家の陣地、陣容、配置場所、数……あらゆる情報を持っている彼女が嘘を付けば、策に嵌められてこちらが敗北を喫するだろう。
――覇王として立つ以上は、敵の策を呑み込んだ上で勝つ……そういった圧倒的な力強さを世に示そう。
華琳はそう考えていた。
袁家という大敵を倒せば、大陸で最も大きな力を持つのは曹孟徳であると広く認められる。書物に描かれる英雄たちのように語り継がれ、この戦の事も語られる。
長きに渡る平穏を望むのならば、覇王がどのようにして戦い、どんな勝利を収めて来たのかを世に示すのも乱世に於いての仕事の一つであるのだ。
さらには、敵を受け入れるとは、器の広さを知らしめるには最適であり、これから乱世を続けるに連れて降伏を嘆願して来るモノが増えるは必至。
後々に行われる選別の差配は難しい所となるが、実力主義の華琳の元では篩に掛けられ、努力無き無能は排除されていくだろう。犬に成り下がるモノなど、この大陸には溢れかえっている。
たかだか臆病者と言わせたくないからというだけで敵の策に乗る華琳では無いのだ。
それは旧き王道とは別の道。覇道ではあるが覇道でない。覇王曹孟徳の歩く、彼女だけの覇道の一歩が出来上がる……この戦に勝利すれば、であるが。
――張コウの心を叩き折って、田豊にも勝利した上でこの戦を終わらせ、欲しいモノを全て私が手に入れる。その為に必要なモノは……やはり桂花。
故に待っている。愛し
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