赤の少女が求めしモノは
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やで」
「ふん……バカモノめ」
重ねて上げられた二つの掌に、パチン、と己が掌を当て。
ゆっくりと扉までたどり着く。
「徐晃」
背中に掛かるのは親しげなモノ。日常で話すような華琳の声。
振り向かずに、彼は脚を止め、
「無事に帰って来たら私を真名で呼ぶ事を許してあげる」
「……ん、りょーかい。俺の事も気軽に秋斗って呼んでくれ」
言葉を受けてから、ひらひらと手を振って部屋を後にした。
しん、と静まり返る部屋で……覇王が大きく吐息を吐いた。寂寥か、悲哀か、期待か……中身は誰にも分からない。
「誰かを泣かせてでもわがままを取るか……本当にバカね、あなたは」
――そして私も……
自分が桂花に対して示した事と同じだと理解しているから、華琳は小さく、ほんの小さく、自嘲の笑いを口から零した。
白髪に藍を混ぜ込んだ少女が一人、部屋を駆け出て行く。
どうか止めよう……大切なモノが無茶をするのに、止めたいモノが居てもおかしくは無い。
小さな背を止めるモノはおらず、それぞれが今からの軍行動の指示が放たれるを待つ中で、詠は一人、唇を噛んで耐える。
――ボクはあのバカ達と一緒で、あんたの事信じるわ。ちゃんとこっちは遣り切るから、あんたも遣り切ってきなさい、秋斗。
宵闇が深まり、幾多の想いが交錯する夜。明けの空はまだ遠く……それでも明けない夜は無いからと、皆の心に安息の光が来る事を、誰もが願っていた。
回顧録 〜ヨイヤミニシズミココロヲトカシタ〜
頸を刎ねられる最後の一時。
彼女からの冷たい視線を受けながら
心の中の絶望を見つめながら
自分は諦観のみに浸っていた。
「どうして、笑ってるんですか?」
問いかけで初めて気付いた。
自分は笑っているらしい。
耳に聞こえる笑い声は自分のモノだったらしい。
恐怖か、侮蔑か……敵の表情は人外を見るモノ。
それでいい、それでいい。
自分はこの世界の人間ではない。
正しく異物で、いるべきではない存在。
大切な彼女が、敵に対して声を掛けた。
敵の真名を呼んでいた。
気になったので聞いてみた。敵の名は、朔夜。
朔夜、朔の夜、日輪を打ち消し、真月さえ上がらぬ真黒の闇。
ああ、正しくこいつは自分の敵だった。
世界は何処までも、自分を殺したいらしい。
頸を刎ねられる前に、叫びを上げた。
“この世界を呪おう。このちっぽけな命を以って、救えないモノを救い続けよう。例えこの世界が壊れても、自分が狂って壊れてしまっても、別の場所、別の時、別の世界であった
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