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乱世の確率事象改変
赤の少女が求めしモノは
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悪の可能性が一番高い……正しく、彼女にとって絶望だった。頭の中に、蛇のようなあの男の悪辣な高笑いが響き始めた。

「ち……違う……もん……」

 震える声に反して、明の身体から殺気がにじみ出る。
 俯いた明を見て、ゆっくりと春蘭と霞が動く。
 桂花は秋蘭に抱き起されて離れて行った。二人が廊下に出てから、扉越しに悲壮溢れる大きな泣き声が上がった。

「何が違う?」

――夕は、成功するって言ったもん。そんな事態には、なるはずない

 ただ一人への絶対の信は呪いと同じだ。現実を受け止める事を拒み、思考の幅を狭めてしまう。
 自分を持たせて育てた徐晃隊とは違い、明は夕の存在に溺れている。故に、彼女を信じて疑わない。
 しかし答えを返せば策だとバラす事になる。どう反論しようとも、彼女の逃げ道は無かった。

「現実を受け止めろ。思考を廻せ。お前の大切なもんは……このままじゃ守れない。失うかもしれないまま確かめないで、お前はそれでいいのか?」

 胸に込み上げる吐き気と、目に込み上げる熱。

――ヤダ、ヤダ、ヤダよ……

 考えれば考える程に怖かった。彼女を失う、愛しい彼女が居なくなってしまう。

――あたしはどうすればいいの? 夕を信じてるよ? これでいいはずなのに、どうしてこんなに否定しちゃうの?

 優しい声も聞けない、暖かい体温も得られない、心安らげてくれる笑顔も……二度と見れなくなってしまう。
 死への疑念の芽は、夕への信仰から芽生える事は無かった。しかしこの追い詰められた状況で初めて芽生えてしまった。

「一人の為に縋り付けよ。自分の手で掴みやがれ。掴んだらぎゅっと握って離すな。運命に抗い世界を捻じ曲げろ。俺だけは……お前の望みを聞いてやる」

 言い方に反して優しい声音は、大切な誰かの為に自分の存在を賭ける彼のモノ。夕と明の同類で、理解者たる黒の声。夕の次に信じていい声。

――イヤだ……あたしはあの子を……失いたくない

 震える膝に、ポタリ、と零れる涙があった。嘘泣きとは違う熱を持った本当の涙で……ヒトの証明。
 嗚咽が響く。一つ二つと涙が零れる。其処には大切なモノを救いたい少女しかいなかった。

「……烏巣の……糧食補完の本陣は、四つの中に無く……白馬により近く、見つけにくい場所に本物の五つ目がある……居るのは郭図で、他の陣は、黒麒麟の嘶きによる火計と、伏兵と、毒矢の雨が、待ってる。烏巣から袁家本隊へ、向かう街道の二つ共には、落石罠と、伏兵が多数」

 しゃくりあげながら、明は袁紹軍の本当の情報を話していった。
 頭の悪くない明は、曹操軍の状況で誰だけが動けるのか分かってしまった。
 これは黒との取り引き。袁家を殺して、彼女を救う為のモノ。黒に賭けるしか、手段は残され
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