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乱世の確率事象改変
赤の少女が求めしモノは
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る事が出来るのだ。

「田豊が本隊と共にそのまま戦うと殺しにくい。袁家の改変を望むなら仲間が多数いるだろうからな。何より勝利に響くようなやり方をしてちゃあ問題外だ。ならどうするか……簡単だ。策が成功するんなら、味方の士気を上げるような偽りの情報でも使って田豊を誘き出せばいいだろ。例えば……且授の救命の方策が見つかった故に、戦の勝利を見たのなら本城に帰還してもいい……そうして本拠地に戻るまでに殺しちまえばいいんだ」

 小石程度の波紋が思考に広がる。
 “もしも”、本陣に残って戦う事も、本拠地まで帰る事も出来ないような状況であったなら……夕の生存確率は格段に低くなるだろう。

「わざわざ此処に集まってる部隊を割かない。なんせ、殺すだけだ。黒山賊の残党なり、そこらにいる賊徒なり、金をちらつかせれば少なくても千くらいは集まるだろ。田豊が買ってる恨みもあるだろうから余計にな」

 一つ、一つと思考の逃げ場を潰されていく。
 焦りからか、明の呼吸が荒くなった。

「さて……此処で一つ尋ねてみたい。且授が助かる方法ってのはお前らだけが調べてたのか? 仲間になった奴等が居るんなら、誰かしら手助けしようと思う奴が居てもおかしくないけど」

 唐突な話題変換は思考を一つに捻じ曲げる誘導術。
 明は自分の記憶を漁り……不可解な行動を起こしていた仲間を一人、思い出す。

「荀ケ殿の話、俺の信頼する軍師の話……情報を聞けば聞くほど、泥沼みたいな家だわな。なら、お前さんの仲間が独自で行動を起こして他にバレない……なんて保障は何処にある?」

 また一つ、逃げ場が無くなった。
 斗詩がなんの為に動いていたのか……夕は悪くないモノだと言った。それなら、自分達の為に且授を助けようとしていたのだと気付く。
 郭図が大人しくなかったか? あれほど疑念猜疑心の深い男が、なんら動きを見せずに淡々と戦を行っていた。それは……明の記憶を掘り起こしても異常に過ぎた。
 繋がるイトが一つ、二つと。
 震える身体を自分で抱きしめた。逃げ出したくなるような気分の中、黒の声は止まるはずも無い。

「あくまで可能性の話だ。一番起こる確率が高くて、一番誰も救われない未来の話。それでいて、曹操軍は兵力を田豊の救出に向ける余裕なんざぁ無い。お前も助けに行けない、張コウ隊も助けに行けない、文を送って確認しようともこちらの返し手だと信じて貰えない。田豊が死ぬ、お前も死ぬ、曹操軍も壊滅する、お前の仲間も大いに傷つく……クク、そうなれば誰が一番得をするんだ?」

 予想だらけの暴論でも、明が知っているモノを並べ立てれば真実に近くなってしまう。
 救いなんて一つも無くて、自分が彼女を助けに行く事も出来ない。得をするのは大嫌いな男と、憎くて仕方ない上の人間たち。
 そんな最
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