赤の少女が求めしモノは
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んかやらないと無理やり抑えつけていた。
「なんで、夕は、本陣に、残ったの?」
しかし震えて仕方ない。緩い空気など既に払拭されていた。
どれだけの絶望を感じているのか、溢れそうになる涙だけが語っている。
思考を廻す明は、答えを掴み取れない。彼女は人形だ。大切なモノの言を信じているから、桂花の描いている答えには、辿り着けない。
「……外部戦略の関係上、袁家の上層部は勝っても負けてもあんた達を殺そうとする」
真っ直ぐに絡み合う視線の中で、悲哀の色が大きく揺れた。
「あんた達を殺そうとするなら、人質なんかもう必要無いんだって……且授が殺されてるかもしてないって……夕なら予測してて当たり前でしょう?」
明の頭に思い出されるのは、普段よりも落ち込み気味な夕の笑顔。何処か、いつもからは感じ取れない些細な違和感が無かったか……。
「袁紹、顔良、文醜が居て、張コウ隊の古参を残して来たから夕は守られる……んなわけっ、ないのよ!」
遂に零れた涙は、明の頬にポタリと落ちた。受け止めた雫は熱くて、冷たかった。
「主君が本隊から離れるのは論外、二枚看板は戦力上外せない、策は授けてあるんだから……成功するなら夕はこの戦には必要ない……じゃあ……っ……どうすると、思う!?」
愛しい誰かが死にそうなら、殺されそうなら……助けに行く。例え死んでいようとも、希望を捨てずに会いに行く。自分に置き換えても当然の行動で、夕なら、それを選択してもおかしくない。
「……嘘、だ」
漏れ出る言葉はもう演技では無い。ただ純粋に、信じられなくて口から出た。
「あの子がどれだけ母親を大事にしてたか見てきたのはあんたでしょ!」
「でも夕ならっ」
「本拠地に戻らずに戦い切る可能性なんてほとんどない! 南皮に戻ったら捕えられるのは当然……あんたはどうなのよバカ明っ! 此処で夕を見捨てられるの!?」
鼻先がくっつきそうな距離で、合わされた黄金の瞳が昏く染まる。
自分なら、絶対に出来ない。見捨てるなんて出来るわけが無い。何が大事だ? 一番大切なモノを救う為なら……自分達は命だって秤に乗せられる。
――違う、違うよ……夕は、変わったんだもん。秋兄みたいになりたくて……袁家を変えるって、決めてるんだもん。
ぐちゃぐちゃに乱れた心で、ぐるぐると掻き乱された頭で、明は何を信じるべきかを思考する。
「バカ明! あんたが……あんたのせいで……夕は……」
あくまで可能性の話でしかない状況証拠が揃っている桂花の言か……それとも、自分の大切な人か。
――あたしは何も迷わずに、夕だけを信じればいい。
根幹にあるモノを確認すれば、ブレる事は無い。けれども痛む胸は、心に沸き立つ焦燥は、抑えられそ
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