赤の少女が求めしモノは
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るだけ。己が王佐に、全てを任せている。
「あんたはあんたらしく、夕だけを助ける為に動けばいいの。どうせ烏巣の襲撃が策なんでしょ? 話しなさいよ、その全て。あんたが夕を助ける為の動きも、それを聞いた後に説明してあげるから」
じとり、と睨む目の端には涙の雫が一粒。
促された明は、俯いて誰とも目を合わせずに、つらつらと説明を零して行った。大切なモノを助けたいが為に裏切る姿を、演じて行った。
「……烏巣に作られた陣は、四つ……東北、東南、北西、南西に位置してる。そして……その内の三つが……罠。分けてるように、見せかけて、二つに糧食はなくて、一つには毒入りの糧食がある」
野戦か、それとも伏兵、と考えていたモノ達は驚愕に支配された。
その策は聞き覚えがあった。思い出せるのは幽州と徐州での戦……白馬の王を追い遣った外道策に、四倍の敵兵を壊滅させた黒麒麟と鳳凰の計略……それらを複雑に絡み合わせて昇華させたモノ。
敵の士気を挫くのは戦の常道。曹操軍としては糧食を燃やすか奪う事を第一としていたのだが、それを読まれていた事にまず驚いた。
燃やさなくてよい糧食を手に入れるのも常道。一応毒見をするが……話す以上は必ず成功出来るように仕掛けているだろう。
「正しい場所は?」
厳しい声で尋ねる桂花は有効な手段だと頭では分かっているが、やり方が気に入らない。そこで待ち受ける敵が誰かと考えれば余計に。
夕と明を苦しめているその男への殺意からか、ぎゅう、と掌を握りしめた。
声に含まれた怒りが、明に伝える。このまま行けば引っ掛かる、桂花は騙された、と。
――そして覇王は……策を聞いた上で罠に掛からないような手も打つだろう……全てが夕の予定通りだ。
「……北西の……」
悲哀の声が綴られる。
誰かを騙す事に心は全く痛まない。彼女の為になるならば、愛しい人の望みが叶えられるならば。
――演技と分かっていようがいまいが、曹操軍はこれで動くしかない。ある程度の制限をされた軍行動は、あたし達の格好の餌食。
「はっ……」
小さな……本当に小さな笑いが、否、嘲笑が漏れた。居並ぶ将達の中から少し離れた席の、黒の男から。皆、視線をその方に向ける。
華琳だけは、口を楽しげに引き裂いて秋斗を見つめて始めた。
睨みつける桂花は無言で、邪魔をするなと視線に乗せる。詠と朔夜は悲壮に顔を歪ませる。
「荀ケ殿はどうやって田豊を救うつもりなんだ?」
軽い声音であった。重苦しい雰囲気をまるで無視した気軽なモノ。哀しい物語にも感情移入をしていない、この場にいる誰の話も信じていない、そんな声。
まず風が、ああそうか、と納得したような表情になった。次いで稟の瞳に知性が灯る。
己が軍師達の有能さを感じ取
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