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乱世の確率事象改変
赤の少女が求めしモノは
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と明を見つめ始める秋斗からは笑みが消える。
 何かがおかしいと感じても流れに任せてみようと、己が思考を巡らせながら華琳は視線を戻した。

 張り詰める空気の中、次いで桂花の口から綴られるのは……

「且授が、助かるわけないじゃないっ」

 友には絶望しかないという、現実。
 目を見開いた明を睨みつけて、尚も続けて行った。

「上層部に訝しがられてるあんた達二人の首輪を生き残らせておくわけないでしょう? 牽制と脅し合いの泥沼になった上層部が、あんたと夕を怖がってないわけがない。居ない内に殺してしまおう、そうすれば誰がやったかも分からない、政治的な影響力が強すぎて私達は袁家上層部を皆殺しには出来ないから自然と守られるなんてことを……袁家ならそう考えるって、どうして分かんないのよっ」

 一気に言い切った桂花は、泣きそうな顔で明を見つめる。
 ただの予想だ。結果が分からないモノで、事実無根。ただし、内部を知っているモノにとっては、起こっているであろう事に最も近い。
 ああ、と明は嘆息を零した。
 表情が歪む。眉が寄り、唇が震え、悲しみが存分に映し出され……顔を伏せた。

 そうして、心の中でだけ舌を出す。

――且授様には護衛を付けて実力行使が出来ないような状況にしてあるし。桂花がこう言うのだって夕の読み筋。あたしを知っているからこそ、使える策があるんだよ。

 演技だ。最初に言葉を崩したのも、且授の話を出したのも、全ては桂花が読み取っているモノを確認する為。
 明は夕を信じて疑わない。夕が大丈夫と言えば、それが正しい。人形のような彼女は、そのまま震える声を紡いでいった。

「そ、そんなわけ、ないし……」
「そんなわけあるの」
「だ、大丈夫だもん」
「じゃあなんの為に夕が本陣に残ってるのよっ」
「……っ」

 此処で黙ればいい、相手が必死に、どうして、何故、と言った時に黙れば、それらしく見えるのだから。
 人の心の動きをよく知る明が仕掛けるのは、暗殺の手段。
 幾人も人を騙してきた。時には色を使い、時には友好を使い、するりと認識の隙間に忍び込む。暗殺の技術は、力だけでは無い。
 絶望に打ちひしがれる人もよく見てきた。なら今回は、自分もそうなって見せればいい。
 嘘泣きは出来る。感情の乗った震える声も出せる。こういう時、どんな顔をすればいいのか……

「……じゃあ、どうすれば……あの子は助かるの……?」

 長い沈黙を以ってして、明は笑った。涙を零しながら、彼女は己を嘲笑うかのように笑った。完成されたその演技は、見ているモノの悲哀を誘う。
 唇を噛んだのは沙和と稟。目を瞑ったのは凪と春蘭と秋蘭と風。目を逸らしたのは霞と真桜。泣きそうになったのは季衣と流琉。
 華琳は黙って成り行きを見つめ
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