赤の少女が求めしモノは
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と。
誘いだ。挑発と同じく、明は相手が出てから合わせるつもりであった。
ギリ、と歯を噛みしめて、桂花が口を開く。
「あんたが伝える情報を信じろって? バッカじゃないの?」
当然、誰も信じる事など出来ない。つい先日までコロシアイをしていたモノを、どうして信じる事が出来ようか。
「このまま戦っても長い時間を掛ければ袁家が勝てる。糧食の強奪、街への放火、略奪と虐殺、こっちはなんでも出来るし、なんでもする。風聞なんか気にならないし、外部はあたしらの戦に構ってるどころじゃないかんね。それはあんた達曹操軍の軍師も分かってるでしょ? 袁家があんた達の街に何も手を打ってないなんて、思ってないよね? 洛陽が燃えたって言うのに、さ」
しん、と静まり返る場は耳に痛い。
思い出して、不快気に眉を寄せて目を伏せたのは洛陽を知っている者達。泣き叫ぶ民の声、燃やされ犯される街、後に残った戦の爪痕は、自分達が守れなかったモノを思い出させる。
華琳だけは呆れたように息を吐いて、それでも沈黙を貫いていた。
――外道策に縋り、勝ちだけを得る事は出来るでしょう。しかしそれをしたくないのはお互い様。今後の動きまで見据えると……これは脅しにはならないわね。
試しに来ている、と華琳は聡く読んだ。民の被害を気にするモノかどうか、わざわざ確かめに来たのだ。
変わらず怯まず恐れずブレず……そんな華琳の様子を見て、明の眼が僅かに細まる。
――甘くは無いか。劉備あたりなら少しは焦ってくれそうだったんだけど……
めんどくさい、と心の内でため息を一つ。
民の被害を気にするなら有利になる、とは行かない相手だ。必要とあれば華琳は民でさえ生贄に捧げる。隙など、一つも無いのだ。
――まあ、そんなあんただから、あたし達の策に余計乗らざるを得ない。
表情に表すこと無く、明はほくそ笑む。
「……だけどあたし達には時間が無い。夕の母……且授様の病を治す為には戦に割いてる人員を医者探しの為の情報収集にも当てたい。この戦を早期に終わらせないと――」
「やっぱり……バカよ」
明の語りは途中で区切られる。怒りと悲哀が渦巻く翡翠の眼差しによって。
昏く、暗く、渦巻いていく明の瞳は……敵意を映し出していった。
「……なにが?」
「見えてない……全く見えてないの」
曇る表情に、苦悶が刻まれる。友を想って、桂花の心が揺れ動いていた。
――交渉の余地も与えない……それが桂花が選んだやり方、か。徐晃ならどうやって切り崩したのかしら。
自分とは違うやり方に口を挟む事無く、つい……と目を横に向けた華琳。秋斗を確認して、僅かに目を見開く。彼が……楽しげな笑みを向けてきた為に。
誰も気付かぬ一寸の視線交錯。のんびり
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