第九章
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第九章
「愛だから、これは」
「愛、ですか」
「愛は大切にしてね、真理奈ちゃんも」
支配人の笑顔がさらにいいものになった。こうしたお店には少し似合わないのではないかと思える程のいい笑顔であった。
「それをちゃんとわかっているのとわかっていないのとで全然違うからね」
「わかりました。じゃあ今は」
「その人気を大切にして。さあ」
話が接客のそれに戻った。
「コーヒー御願いね」
「はい。では行って来ます」
「うん」
こうして彼女はコーヒーをテーブルの上に置いて指名のテーブルに向かった。そうしてコーヒーをお客さんの前に置くと。動きが止まった。
「えっ・・・・・・」
「うん・・・・・・」
そこにいたのは高谷君だった。照れ臭そうに、恥ずかしそうにそこに座っていた。
「どうしてこのお店に」
「あのさ」
高谷君はその照れ臭そうな笑顔で真理奈の顔を見てきた。そうして言うのであった。
「ここでアルバイトしているのってあれだったんだね」
「あれって」
「遊園地に行く為だったんだね、僕と」
真理奈をじっと見ながらの言葉であった。
「それでここで。アルバイトしていたんだ」
「どうしてそれを」
「話、聞いたから」
この僅かな言葉だけで充分であった。真理奈は誰が高谷君に話をしたのかわかった。だからハッピーエンドになるのだと。その言葉の意味も今わかったのだった。
「それでだったんだね」
「それは・・・・・・」
「言わなくてもいいよ」
高谷君にはもうわかっていた。だからもう言葉はいらなかったのだ。
「それはね」
「いいの」
「うん、いいよ」
そう言ってそれから先は言わせなかった。
「それより。御免ね」
今度は謝ってきた。
「今まで気付かなくて。それで酷いこと言って」
「いいわ」
今度は彼女がこう言う番であった。穏やかで優しい声で。
「それは。気にしていないから」
「そうなんだ」
「それよりね」
そして真理奈は言うのだった。
「遊園地だけれど」
「一緒に行っていいかな」
言ってきたのは高谷君の方からだった。
「それは」
「私が言いたかったんだけれど」
今の言葉は。そうなのだった。
「今の言葉は」
「そうだったの、御免」
「けれど。いいわ」
こくりと頷いて答えてきた。それは否定はしないのだった。
「いえ、一緒に行って」
そうして言葉を訂正する。
「私と遊園地に。御願い」
「僕の方こそ」
高谷君も真理奈に御願いするのだった。
「一緒にね。御願い」
「ええ。二人でね」
「うん」
一週間前のことはもう許されて流されていた。そうして二人でこれからのことを想うのであった。それは今もうはじまっていた。
「ところでさ」
「何?」
話は変
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