暁 〜小説投稿サイト〜
バニーガール
第六章
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

第六章

「無理に誘ったせいでこうなったんだからな」
「いや、それは」
「もう無理には誘わないからな」
 そうしてこう言ってきた。
「これ以上はな」
「そうなのか」
「今日のことは忘れるなって言っても無理だろうがな」
 流石にそれを言うのは図々しいと思うのだった。
「それでもな。実際のところ」
「気にしないさ」
 高谷君も彼の心境を察して言葉を返した。
「だから気にしないでくれよ」
「悪いな」
 二人は後味の悪いコーヒーになったがとりあえず気を鎮めていた。だが真理奈と和歌子の方はそうはいかなかったのだ。
「もう終わりじゃない」
 真理奈は店の奥の倉庫で大泣きだった。泣いて泣いて仕方がない有様だった。
「高谷君とのデートの為だったのにその高谷君と」
「確かに痛いわね」
 心配して側にいる和歌子が彼女に言う。倉庫の中には二人の他に誰もいない。ダンボールの山が積み重ねられているだけである。
「まさか彼まで来るなんて」
「折角お金が溜まってもこれじゃあ何の意味もないじゃない」
 真理奈は泣き続けたまま言う。
「どうしたらいいのよ。お金があっても仕方ないわよ」
「落ち着いて」
 しかし和歌子はここで真理奈を落ち着かせるのだった。そっと彼女の両肩を抱いて。
「ここはね」
「落ち着いてどうにかなるの?」
 真っ赤になった目でその和歌子に問う。
「もう完全に終わりじゃない。どうすればどうにかなるのよ」
「私に任せて」
 しかし和歌子はそれでも言う。
「上手くいくから」
「いくの?本当に?」
「私に任せて」
 和歌子は優しい声で真理奈に囁いてきた。
「絶対に上手くいくから」
「本当に?」
「ええ、確実にね」
 彼女の言葉には強さがあった。全てがわかっているような。
「上手くいくわよ」
「高谷君と?」
「そうよ。だから安心して」
 また真理奈に囁く。
「安心していていいから。真理奈は」
「高谷君とデートできるの?」
 そのことだけを考えていた。それだけに彼女も必死だった。その必死な顔で和歌子に対して問うのだった。まるで神様にすがるように。
「それで」
「そうよ。真理奈は何の心配もいらないから」
「嘘じゃないわよね」
「私が嘘を言ってことがあるかしら」
 和歌子の言葉は何時になく真剣だった。その真剣さは真理奈にも伝わった。
「ないわよね」
「え、ええ」
 和歌子のその言葉に対して頷く。
「だからよ。真理奈はこのまま待っていればいいから」
「待っていれば」
「それだけでいいの」
 和歌子の声が穏やかなものになった。
「わかったわね。任せて」
「わかったわ。それじゃあ」
 真理奈も和歌子のことはわかっている。だからこその親友なのだ。そして真理奈は友人を信じるタ
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ