いる筈がない
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に戻るから」
「一緒にどうかしら」
「えっ、一緒にって」
「泳ぐってことですか!?」
今聞いた言葉を思わず問い返した二人であった。二人にとってはまさに寝耳に水の話であった。どれだけ寝惚けていても完全に起きてしまうような言葉であった。
少なくともこれは二人にとってはあまりにも刺激的であった。本当に少しばかり残っていた寝惚けが完全に吹き飛んでしまった。それはコーヒーを飲んだ時よりも効果があった。もう目が覚めて仕方がなかった。そして心臓の鼓動が高まっていくことさえ感じられた。もうこうなってはどうしようもない、自分で自分が抑えられなくなる、何か夢を見ているような気持ちになってそのうえでさらに期待までしてだ。それでどうしようもないまでに高まるその気持ちを自分達でもそれぞれ感じてである。たまらなくなってきていた。
「俺達と」
「つまりは」
「じゃあ誰が他にいるの?」
「君達だけよ」
二人の人魚達はまた彼に言ってきた。それはまるで彼等の心の中を覗いているかのようである。もっとも年が上の彼女達にとってみればだ。こうしたことはもうわかっていてそれでやってきているのかも知れない。少なくともそうなっていてもおかしくはなかった。だとすれば確信犯であるがどちらにしても彼等がこの年上の麗しい人魚姫達に篭絡されようとしていることは明らかであった。これは二人でなくともそこに誰かがいればすぐにわかるような有様であった。彼等にはもうどうしようもなくなってしまっていた。心の高まりはそこまで高まっていたからである。
「だからね。いいわね」
「一緒に泳ぎましょう」
「嘘じゃないよな」
「そうだよな」
二人は顔を見合わせて言い合う。お互いに頬をつねりそうになるがそれは止めた。幾ら何でもあまりにもベタな展開だと思ったからである。しかしそう思ったことは事実である。嘘だとしか思えなかった。完全に目が覚めてしまっているがそれでもである。そう思わざるを得ないような有様である。なお二人は今は鏡を見ていないので彼等は気付いていなかったがその顔は真っ赤になってしまっている。もう興奮してしまっていてどうにもならなくなっていたのである。心臓は先程よりもさらに高まりそれがもうどうしようもないまでになってしまっている。それが可能ならば心臓は胸から飛び出てしまっていたであろう。二人はそこまで高まっていたのである。
「こんな奇麗なお姉さん達と一緒なんてな」
「狐に化かされたみたいだよな」
「あら、奇麗だなんて」
「それに海に狐は出ないわよ。出るのはね」
「出るのは?」
「何ですか?」
こう二人が問うとであった。返答は。
「人魚よ」
「海から出るのはね」
「人魚姫・・・・・・」
「しかも泡になって消えることはない」
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