第3部 始祖の祈祷書
第4章 三つ巴の探り合い
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「ええ、無理言って、厨房に立たせてもらったんです。でも、こうやってウルキオラさんが食べてくれたから、お願いした甲斐がありました」
ウルキオラは、昨日のシエスタの言葉を思い出した。
その本意を聞いてみようと思った。
しかし、その前にシエスタが口を開いたので聞くことができなかった。
「あのね?私の故郷も素晴らしいんです。タルブの村っていうんです。ここから、そうね、馬で三日くらいかな……。ラ・ロシェールの向こうです」
ウルキオラはケーキを口に運びながら、相槌を打った。
「ほう」
「何にもない、辺鄙な村ですけど……、とっても広い、綺麗な草原があるんです。春になると、春の花が咲くの。夏は、夏のお花が咲くんです。ずっとね、遠くまで、地平線の向こうまでお花の海が続くの。今頃、とっても綺麗だろうな……」
シエスタは思い出に浸るように、目を瞑って言った。
「私、一度でいいから、あのお花の海の上を飛んでみたいな」
シエスタは空を見上げて言った。
「そうだ!」
シエスタは、胸の前で、手を合わせて叫んだ。
ウルキオラは驚いて、本から視線を外した。
「どうしたいきなり」
「ウルキオラさん、私の村に来ませんか?」
「何故だ」
「あのね、今度お姫様が結婚なさるでしょう?それで、特別に私たちにお休みが出ることになったんです。でもって、久しぶりに帰郷するんですけど……。よかったら、遊びに来てください。ウルキオラさんに見せたいんです。あの草原、とってもきれいな草原」
「ああ」
ウルキオラは相槌をすると、紅茶を啜った。
「シエスタ」
「はい?なんでしょ?」
いきなりウルキオラに名前を呼ばれたので、シエスタはきょとんとした。
「昨日の言葉はどういう意味だ?」
ウルキオラは先ほどの思ったことを聞いてみようと思った。
「昨日…の?」
「一番素敵なのは俺だといったろう?あれは、どういう意味だ」
ウルキオラの言葉にシエスタは顔を真っ赤にした。
それから、もじもじしながらウルキオラをちらちらと見た。
「あ、あれは……その…」
「昨日、一日中考えていたがまったくわからなかった。デルフに聞いても何も答えないしな」
ウルキオラはデルフの切っ先部分の鞘を叩きながら言った。
シエスタは何かを決心したかのような顔をした。
そして、テーブルに身を乗り出し、真っ赤な顔をウルキオラに向けた。
「こ、こういう意味です!」
そう言ってシエスタはウルキオラの唇に自分の唇を近づけた。
ウルキオラは目を見開いた。
理由を聞いているのに、いきなり接吻されたので、驚いてる。
やがて、ウルキオラの唇からシエスタの唇が
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