第3部 始祖の祈祷書
第4章 三つ巴の探り合い
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既に半分ほど読み終えていた。
ウルキオラは、俺の存在とはまるで違うなと思いながら読み続けている。
まず、この本の主人公は人間である。
ウルキオラは虚なので、種族の時点で異なっている。
そして、この主人公は魔法を使うことができない。
ウルキオラは霊力を持ち合わせているので、魔法と同じようなことができる。
似ている点といえば、剣を持ち戦うことと、この世界では平民であることぐらいである。
そんな風に、読書していると、シエスタが紅茶の入ったポットとカップ、ケーキをお盆に乗せてやってきた。
先ほどまで、向かいの椅子にシエスタが座っていたのだが、「お飲み物を持ってきますね」といって走り去って行ったのだ。
シエスタはお盆をテーブルの上に置き、椅子に腰かけた。
ポットに入った紅茶を、カップに注ぐ。
そして、ウルキオラの前に、ケーキと一緒に置いた。
「お待たせしました〜」
シエスタは満面の笑みで、ウルキオラに言った。
ウルキオラは本から視線を外さずに、紅茶の入ったカップを手に持った。
一口啜ってテーブルに戻す。
そんなことを二、三回繰り返した。
「あ、あの」
シエスタは俯きながら言った。
ウルキオラは本から視線を離し、シエスタを見つめる。
「なんだ?」
「その、最近ウルキオラさん厨房に来ないじゃないですか……どうしてかなー、と思って」
シエスタはもじもじしながら答えた。
その仕草は、はたから見るととても可愛らしい。
しかし、ウルキオラがそんな感情を抱くわけもなく、再び紅茶を啜った。
「最近、ルイズに無理やり食堂に連れて行かれるからな」
「そうだったんですか?最近私、先生方のテーブルの給仕ばっかりしていたから、気づきませんでした。じゃあ、余計なお世話でしたか?」
シエスタは、しゅんと項垂れた。
「そんなことはない。こうして紅茶を持ってきてくれるのはありがたいことだ。これからも頼む」
シエスタはウルキオラの言葉に、ばっと顔を上げた。
「本当ですか?」
「嘘を言ってどうする」
シエスタの顔が輝いた。
「じゃあ、これからも持ってきますね!」
テーブルの上に、ケーキと二つのカップ、それにポットが置かれている。
ウルキオラはケーキをフォークで崩し、口に運んだ。
甘い味がウルキオラの口に広がる。
「おいしいですか?」
シエスタが、尋ねてくる。
「ああ」
ウルキオラはそっけない返事をした。
しかし、嘘ではなかった。
「えへへ、嬉しいです。それ、私が作ったんです」
シエスタは、はにかんだ表情で言った。
「そうか」
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