第三章
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第三章
「それはさ」
「わかってるならいい」
それならとは言ってきた。
「けれど」
「けれど!?」
「女は皆そうする」
オペラのタイトルを日本語訳した言葉も出してきたのである。
「男も皆そうする」
「男もなんだ」
「そう。女も男も同じ」
そうだと。表情を変えずに言うのである。
「私それよく知ってる」
「知ってるんだ」
「それ見せてあげる」
そしてこんなことを言ってきたのである。
「今日私の家に来てくれればわかる」
「わかるって。あのさ」
「だから男も皆そうする」
この言葉を再び言ってきたのである。
「それがよくわかる」
「そ、そうなんだ」
戸惑いは消せないままであった。
「それでわかるんだ」
「今日お父さんは出張でお母さんは親戚に家に行ってて帰ってくるのは真夜中」
「ってことは」
「私だけ」
実にあからさまな誘惑の言葉でもあった。実際に恵子は誘ってもきていた。
「どう?」
「家に来いってことだよね、それって」
「その通り」
やはりそうであった。
「それでわかるから」
「あのさ、それってつまり」
「沢山言わない」
政行が言うのを先に止めてしまった恵子だった。
「というか女の子に言わせない」
「あっ、そうだね」
恵子に言われてそれで引っ込んだ政行だった。その無口でクールな調子の言葉がかえって威圧感を出しているのであった。この時点で負けていた。
「それじゃあ今日なんだ」
「そう、今日」
まさに今日だというのである。
「わかったわね」
「わかったよ。じゃあ」
「女は皆そうする」
またこの言葉が出て来た。
「それ嘘だから」
「はあ。そうなんだ」
そんな話をしたのであった。政行はクラスに戻って自分の席であれこれ考えたのであった。するとそこに皆が来たのであった。
「おいよ、何だよ」
「喧嘩したか?」
「清浦とよ」
「家に呼ばれた」
そうだというのである。
「物凄いことになった」
「って御前等まだそこまでいってなかったのか?」
「付き合いだしたの結構前じゃねえか」
「それでもか」
「家に行くのははじめてなんだよ」
そうだったというのである。
「実はさ。それに」
「それに?」
「今度は何なんだよ」
「あのオペラな」
さっき観たそのオペラのことも話に出したのであった。
「そのことも言ってきたしな」
「あれな」
「あのオペラな」
「それが本当かどうかってことらしいんだよ」
それだというのである。
「向こうが言うにな」
「向こうが言うにはか」
「清浦がかよ」
「あいつ何考えてるかわからないところがあるからな」
首を捻りながらの言葉であった。
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