第二章
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第二章
「だってよ。何を考えてるかわからないしな」
「そうだよな」
「ポーカーフェイスだしな」
「無口だしな」
彼女の性格である。そうしたことで有名なのである。
「そんな相手だけれどな」
「まさか清浦もって」
「そう考えてるのか?」
「ひょっとしたら」
実際にその考えを見せる彼であった。
「やっぱりあるよな、それって」
「まあゼロじゃないよな」
「清浦だって女だしな」
「それを考えたらな」
周りはひそひそと話す。そのオペラを観ながら。
政行もである。オペラを観ながらだ。あれこれと考えるのであった。
「ああして結婚式とかになったら」
「だよなあ。これって男はかなりへこむぜ」
「ほら見ろよ、お互いに内心かなり怒ってるじゃねえか」
「気持ちはわかるな」
オペラの中では男達は信じていた婚約者がそれぞれ何だかんだで他の男になびいてしまっているのを見て怒りを爆発させている。政行も皆もそれを見て言うのであった。
「これはかなりな」
「やばいよな」
「実際に起こったらな」
「ああ、そうだよ」
ここでまた言う彼等だった。
「この事態はな」
「我が身になったらな」
「嫌なんてものじゃないぜ」
「あいつもまさか」
こんなことも思う政行だった。
「ひょっとしたら」
只のオペラには思えなかった。そうしてである。彼はオペラを観終わってから何となく浮かない気持ちになってしまったのである。教室に戻る足取りが何処か重い。
その恵子と横に並ぶ。政行の身長は一七〇程度である。とりあえず普通といったところだ。その彼の横にいる恵子は三十センチ近く低い。相当な小柄である。
その恵子がである。ぽつりと言ってきたのだ。
「凄い話だった」
「えっ、あれっ!?」
恵子がいきなり言ってきたので驚きの声をあげてしまった。
「今喋った!?」
「喋った」
まさにその通りだと返してきた恵子であった。
「それがどうしたの」
「い、いやさ」
政行は戸惑いながらも彼女の言葉に応える。あれこれ考えているその横でいきなり喋られたのでそのことにかなり戸惑っているのである。
「あのオペラだけれどさ」
「ああしたことはあるから」
政行の心を見透かしている様な今の言葉であった。
「私も気をつける」
「あ、ああ。そうなんだ」
「私は伊藤の彼女だから」
「自覚あるんだ」
「ある」
それはあるというのである。
「だから気をつける」
「そ、そうなんだ」
「けれど」
そして恵子はさらに言ってきたのであった。
「それは伊藤も同じ」
「俺もなんだ」
「そう、気をつける」
こう言ってきたのである。
「いい?」
「あ、ああ」
戸惑いながら答える彼だった。
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