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江戸女人気質
第八章
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第八章

 馬がさらに速くなった。そうして見る見るうちにであった。
「おい、あの速さ!」
「あ、ああ!」
「何て速さなんだ!」
 皆驚きを隠せなかった。何と彼女の馬はそれまでの倍は速くなり瞬く間に深田の馬に追いついた。そうして何とその馬を抜いたのである。
「抜いた!?」
「遂にか!」
 江戸の町民達もこれには大いに驚いた。
「まさかここで」
「一気にか」
「何てことだ」
 それを見て口々に言う。そして驚く彼等をよそにだ。
 終点に着いた。かがりの馬の方が先であった。彼女はそこを駆け去るとここで思い切った声をあげて喜びを表したのであった。
「深田殿、これでいいですね!」
「はい、それでは」
 少し遅れて深田の馬が来た。彼は汗だらけであり馬ははあはあと辛そうな息を出している。彼もまた全力を出したことは明らかであった。
「その様に」
「勝ってこそです」
 かがりもまた顔中から汗を滴らせている。そうして肩で息をしている。しかしそれでも言うのであった。
「手に入れたいものは手に入ります」
 こうして彼女は深田の家に嫁に入ることになった。だが彼の両親達はどうにも苦い顔をしてまたしても深刻な話し合いの場を設けていた。
「全く。馬で勝ってそれで婿を手に入れるなぞ」
「そうです」
「何といいますか」
「それがおなごでしょうか」
 父と兄達が口々に末妹のことを話した。
「そんなおなごなぞ」
「武家の娘ではありません」
「全くです」
「その通りだ」
 まさにそうだという父であった。
「ここまでおなごではないとはな」
「確かにそうです」
「かがりにも困ったものです」
 それぞれの家に嫁に入っている娘達もここで言う。
「あの娘は子供の頃から手がつけられませんでしたし」
「今もああして婿殿のところに入る等とは」
「ですが」
「そうですね」
 しかしであった。ここで娘達はこんなことを言うのであった。
「かがりらしいですし」
「幸せならばそれでいいではありませんか」
「そうですね」
 母も言った。
「あの娘もこれでやっと幸せになりましたし」
「あれで料理も裁縫もできますし」
「心配はいりませんわ」
「それにです」
 ここで母はまた言うのであった。
「確かにああいう娘で困ったものでありますけれど」
「何だ?」
「かがりは幸せになれるのですよ」
 こう夫と息子達に話すのである。
「ではそれでいいではありませんか」
「いいというのか」
「あの娘の白無垢姿を御覧になって下さい」 
 夫に対してまた告げる。
「そうすればわかりますわ」
「そういうものかな」
「そうです。では行きましょう」
 こう夫だけでなく息子や娘達に対して告げた。
「今から。あの娘の晴れ舞台にね」
「そ
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