Interview8 蝕の精霊 T
「もう少しだけ、ここにいて!」
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の粘液に塗れてはいるが、それ以外には外傷らしい外傷はない。
「イリス……イリス!」
「う……」
イリスがゆっくりと瞼を開けてゆく。イリスは力が入り切らない様子で半身を起こした。
「その火傷……貴女が出してくれたの?」
「まあね。イチかバチかだったけど。よかった、無事で」
粘液に突っ込んだ両腕はずくずくと痛んで水ぶくれが出来ている。だがそれを打ち明けるとイリスが気に病むかもしれないから、レイアは笑顔の下に痛みを隠した。
イリスは自身の手、胴、足と全身を見渡し、やがて苦く笑んだ。
「皮肉なものね。より精霊に近づいたから苦しんでいたのに、精霊に近づいたから貴女と契約して難を逃れられた」
イリスは火傷したレイアの両手を捧げ持ち、跪いた。
「レイア・ロランド。鳥瞰の瞳を持つ乙女よ。蝕の精霊イリスは、己を省みずこの身を救ってくださった貴女の真心に報いるべく、貴女に誠心誠意お仕えすることを此処に誓います」
「ちょ、や、やめてよ、イリスっ。別にそういう、仕えるとか、上下関係とかがやりたくて契約したんじゃないんだから。今まで通りにしよ? ね?」
「……レイアは清々しい人ね」
ふいにイリスがレイアの胸に飛び込んだ。軽い、いや、薄い。
復活したミラにじゃれついた時にも同じ感覚があった。人間ではないモノの質量。幽かとしか表現できない、現世における精霊の存在感の脆さ。
「ありがとう。ほんとに、ありがとう。イリスを助けて、くれて。だいすきよ、レイア。一生忘れないから」
囁く声は外見年齢よりずっと幼く澄んでいた。
レイアもまたイリスを強く抱き返した。
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