第11話 イタ電
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われた暴力団。少なくとも、こいつらには追われてる。いや、今日からまた追われ始めた、という方が正しいかな?で、俺の親友として公安に認識されている謙之介の所にも、今から家宅捜索が及ぶというわけだ。理解できた?》
「…………」
小倉は目をシパシパさせながら、画面のネット電話のウィンドウと、メモ帳のウィンドウを交互に見た。何も言葉が出なかった。田中の言葉はどれも、現実感に欠けていた。追われてる?青葉松陽なんて、しみったれた高校の優等生なんぞが?それも、公安や暴力団まで噛んできてるとなれば、個人でヤクをキメてるとか、そんなレベルの話でもないし、補導とかそんなレベルの話ではましてやないだろう。たかが高校生に、そこまで大それた真似ができるのか?そもそも、俺が田中の親友って何だ、そこまで深い関係でも……
《姿をくらました俺が外部と持つ接触は、この謙之介のパソコンだけだ。このパソコンは、逃亡者・田中智樹とのホットラインなんだよ。ああ、もちろん、俺の事を追ってる連中にバレない工夫はちゃんとしてるから、心配しなくても良いよ。ま、ホットラインが繋がってる時に、このパソコンから特殊な技術使って逆探知されない限りは大丈夫さ。ま、手間をかけて接続した分、切るのにも10分以上かかっちゃう。そして、公安は謙之介の部屋に後10分足らずで到着する。つまりだよ。俺は今、謙之介にこういう要求をしてる訳。ヤバい!公安が俺の居場所を突き止める、唯一の手がかりに気づいちゃう!だから、このホットラインを切る時間を、そこの偽情報を公安に流す事で稼いでくれ!》
「…………」
小倉は、短い自分の髪を手でくしゃっと掴んだ。もはやため息も出ない。こいつは、画面の向こうのこいつは、さっきから一体何を言ってるんだ?
「……バカか……さっきから黙って聞いてりゃあ……何を根拠のない事を……」
《根拠をハッキリと示してあげられない事については謝るよ。でもあんまり、根拠をハッキリと示しすぎると、俺への愛を試す実験の意義に関わっちゃうからねぇ》
顔の見えない、画面の向こうの田中の声は、いつもと同じく飄々としていた。様々な組織から追われている人間、それも、今現在窮地を迎えている人間の声だとは、中々思えない。
《もし捕まったら、俺はロクな死に方しないだろう。自白剤を半リットルもぶち込まれて、人格も体も滅茶苦茶に壊されながら死んでいくだろうな。さあ、どうする?やっぱり、俺の言う事は信じないかい?全て俺の狂言として片付けるかい?それも良いだろう。根拠が無いし、公安の捜査を撹乱したら、謙之介も俺の共犯者になっちゃうからねぇ。撹乱した事がバレない保証もないし、俺に言われた通りこれをやった所で、俺が助かるという保証もない。信じない理由を見つけるのはとっても簡単だ、疑うのはとっても簡単
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