第二章
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第二章
「水術もやれば弓も鉄砲だってな」
「武芸十八般かよ」
「この泰平の御時世にかよ」
「またえらく変わり者だな」
「梅井家もかなり困ってるらしいぜ」
娘について話される。
「相当な」
「困った話だな、見たら顔はかなりいいのにな」
「ああ、もう嫁にいく歳だろ?それであれか」
「頭が痛いんだろうな」
「実際にそうらしいな」
このことも知っているのだった。話す男は。
「梅井家の男姫殿さ」
最後にそんな仇名まで言われた。後にはうずくまる男達がいた。娘の一撃がまだ効いていたのだ。娘は何時の間にか姿を消していた。
梅井家は武家屋敷が連なるその中でとりわけ大きな姿を見せていた。門構えもその内装もかなり立派なものであり庭も広く見事なものである。池の中の錦鯉達も大きくその中で泳いでいる。今その鯉達に厳しい立派な顔立ちで姿勢のいい男が餌をやっていた。
服は質素なものであるが仕立ては奇麗なものだった。その格好で餌をやりながら後ろにいる女に対して話していた。
「ではかがりはまたか」
「はい、またでございます」
女もまた厳しい顔をしていた。顔はあの娘に生き写しであるがその服は武家の女のものであり髪もそうである。その女が彼に言うのである。
「また町のごろつき達をです」
「やれやれだな」
男はそれを聞いてさらに言った。
「あいつだけはどうしようもないか」
「口を酸っぱくして言っているのですが」
「それでもだな」
「はい、困ったことにです」
そうだというのである。
「また喧嘩をしてそれでなのです」
「三人をのしてしまいました」
「今度は三人か」
「瞬く間にです」
「相変わらずだな、あいつは」
「どうしましょうか」
女は男に対して尋ねた。
「かがりは今日は」
「言ったところで聞くかどうか」
「それはありません」
それは二人もわかっていた。嫌になる程である。
「困ったことに」
「本当にな。何であんな娘になったのか」
「全くです」
そんな話をしているとであった。不意にあの娘が二人の後ろにある屋敷の廊下に現れた。娘は障子を背にしてそのうえで廊下を進んできていた。白い障子の前にその勇姿を見せている。
「あっ、父上母上」
その二人に顔を向けて告げた。
「こちらにおられたのですか」
明るい顔で二人を見ての言葉であった。
「こちらではない」
「そうですよ、全く」
両親は彼女に怒った顔を向けて答えた。
「聞いたぞ、また喧嘩をしたそうだな」
「それも町人のごろつきと」
「向こうから絡んできたのです」
その娘かがりは平然と答えた。
「だからなのですよ」
「それでもだ。娘が喧嘩などとは」
「ましてや武家の娘が」
「いいではありませんか」
しかしかがりは両親に
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