魔石の時代
終章
ある家族の肖像
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。それが幸せなんだろうさ。ま、あの魔女が受け入れてくれたってのが大きいのは、確かにその通りかもしれないが……」
別に、嬢ちゃんはあの魔女にだけ笑いかけている訳じゃねえんだぜ?――男が笑うと同時、唐突に曖昧な世界がさらに滲み始めた。夢の終わり。つまり、そう言う事だろう。
「アルフ」
目を開くと、視界いっぱいにフェイトの顔があった。
「起きて。もうお昼だよ」
ああ、悔しいけどアンタの言う通りかもね――言いたい事だけ言って消えたその男に向かって呻く。確かに、大切な主は笑っていた。あの女――プレシアに向ける顔で。
「ねぇ、フェイト」
「なぁに?」
その笑みに――焦がれていたその笑みに耐えきれず、思わず言っていた。
「アタシはさ、フェイトの役に立ててる?」
アタシに何ができただろうか。大切な事はみんなあの兄妹がやってくれた。アタシはただ傍にいる事しか――
「もちろんだよ。辛い時も悲しい時もアルフが一緒にいてくれたから、私はここまで頑張ってこれたんだ」
それに、約束してくれたでしょ。ずっと一緒にいてくれるって――その曇りのない笑顔に思わず見とれていた。
「フェイトは今幸せ?」
訊くまでもない事だろうが、それでも問いかけていた。
「もちろん。母さんが笑ってくれて。アルフがいてくれて。地球では光となのはが待っててくれている。凄く幸せだよ」
アルフはそうじゃないの?――ほんの僅かに陰ってしまったその笑顔を見て、気付けば叫んでいた。
「幸せに決ってるじゃないか!」
それは、言い訳ではない。何に誓ってもいい。それは……それがアタシの本心だ。フェイトの願いがやっと叶ったんだ。アタシが見たかった笑顔を浮かべているんだ。それを独り占めできないことなんてどうでもいいくらいに。
「あら、アルフおはよう」
「あのね。今日はアルフが好きなお肉だよ」
「フェイトが教えてくれたのだけど……」
料理なんてするのは久しぶりだから心配だわ――呟くプレシアに、少しばかり毒気が抜かれた。この女だって、フェイトの事ばかり気にかけている訳ではないらしい。それなら、少なからず不本意だけれど――
(そうだね……。それで納得しとくよ)
この女も、アタシの群れの仲間――つまり家族だ。フェイトを再び悲しませない限り、アタシが守るべき相手の一人なのだと。
まだ少し歪だけれど、これがフェイトが望んだ――あるいはアタシも求めていた場所。帰るべき、守るべき場所だった。
4
ジュエルシード事件に決着がついておよそ二ヶ月程が過ぎた頃の事である。
その日の夕食は、テスタロッサ一家と同席する事になった。いや、より正しくいうのであれば、テスタロッサ一家の夕食に僕らハラオウン一家が同席する事になったというべきだろうか。まぁ、そんな事はどうでもいい
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