魔石の時代
終章
ある家族の肖像
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が狼だという事もあるかもしれないけれど……どちらかと言えば、フェイトとあの女のやり取りを見ているのが辛いというのが本音だった。
(フェイトが笑ってくれるなら、アタシは、それで――)
あてもなくソファでゴロゴロしていたせいだろう。段々と意識が曖昧に、なって……。
「……確かに俺が後始末するとは言ったけどよ。こう言うのはエレインとかモルドレットとかの仕事だろ。どう考えても」
アヴァロン所属の魔法使いの仕事じゃねえよ――と、誰かがぼやいている。
「いいから、早く行け」
「ほら、あの子も『気付いた』みたいよ」
「期待しているぞ、相棒」
そんな声に背中を押され――というか、実際に突き飛ばされたらしいその誰かがこちらに近づいてくるのが分かった。
「クソったれ。どいつもこいつも……。大体、これって後始末なのか?」
その呻き声のおかげで。そこでどうやら、自分が夢を見ているらしい事に気付いた。
「なぁ、狼の姉ちゃんよ。ヤキモチ焼きたくなる気持ちは分かるけど、あんまりムクれてばっかりいるとまたあの嬢ちゃんが心配するぜ?」
この男は一体何を言っているのか。たまらず跳ね起きて、怒鳴り返す。
「誰がヤキモチ焼いてるって!?」
「オマエだオマエ。ニミュエより分かりやす――ッ!?」
あ、何か氷のバラっぽいものが頬をかすめた――突然の惨劇(未遂)に思わず意気がくじかれる。そこで、ようやく違和感を覚えた。何故だかその男の姿ははっきりしない。目を凝らせば凝らすほど曖昧に滲んでいく。というより、世界全体が曖昧だった。
まぁ、夢なんてこんなものだろうけれど。
「じゃなくて! アンタ、変な言いがかりもそれくらいにしな! アタシが誰に嫉妬してるって!?」
「そりゃあの魔女にだろ。あんなに酷い事をした奴にみすみすとられるなんて!――ってなところか」
その言葉は鋭く胸に突き刺さった。というより、納得できてしまった。このいらいらの正体。それは、少なくともその理由として――
(ああ、そっか。アタシ、嫉妬して――)
嫉妬が含まれていないと言えばきっと嘘になる。ああ、そうか。アタシはあの女に嫉妬しているんだ。今まであんなに酷い事をしてきて――それでも、フェイトにあんな笑顔を向けてもらえるあの女に。
「だが、それは勘違いだと思うぜ?」
「勝手な事を……ッ!」
認めてしまえば――耐えられなくなる。結局のところ、アタシはフェイトを守る事ができなかったんだ。こんなの使い魔失格もいいところだ。それなのに、嫉妬なんて――
「あの嬢ちゃんがあんな風に笑ってられるのは、今が幸せだからだろう」
それはあの女が受け入れたからだろう――アタシが怒鳴り返すより先に、その男はにやりと笑った。
「母親が受け入れてくれて。姉みたいな妹みたいな使い魔がいて。友達ができて
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