魔石の時代
終章
ある家族の肖像
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の人は――その名前が思い浮かぶより早く、夢は終わる。分かっていた事だ。とても寂しくて哀しいけれど……私とあの人は同じ時間を生きられない。
そして、私は私の時間を歩み始める。大切な人達と一緒に。
3
正直に言えば、あまり納得できていない。それが、アタシの偽らざる本音だった。
(そりゃ、フェイトが笑ってくれるのは嬉しいけどさ……)
さらに言えば、あの女――プレシアが抱えていたモノも知った。あの女が苦しんでいた事だって認めなければならないだろう。その苦しみに思いを馳せられないほどにはアタシは鈍くもないし、冷酷でもないつもりだった。でも、だからと言って今まで主にしてきた事全てを許せるほどには、アタシは出来た使い魔ではない。苦しんでいたのは、フェイトだって同じことだ。その姿をアタシはずっと見ていたんだ。
だから、簡単には割り切れない。信じられない。いくらフェイトが今まで見た事のないような笑顔を浮かべていたとしても――
(ああ、そっか……)
どうやら認めなければならないらしい。この不快感は、アタシの勝手な感情に過ぎないのだ。……少なくとも今のところは。あの艦長と執務官が支援を決断する程度にはあの女が本気で改心しようとしている事は認めなければならない。にも関わらず燻ぶるその不快感。何だかわからないが、これが腹立たしいのだ。
(いやまぁ、それを言えば光だって最初はあれだったけど……)
もう一人、アタシには出来なかった事をやってのけた少年の姿を思い出す。アイツと初めて出会った時はそりゃもう本気で殺されるかと思った。だけど……
(アイツだけ……アイツら兄妹だけだったしね。諦めなかったの)
光はもちろん、アイツの妹……なのはがいなければ、こうまで上手くは行かなかっただろう。殺戮衝動とやらに飲まれ、かなり攻撃的になっていた――アースラでの生活を見て改めてそう思う――光だけでは管理局の協力を取り付けるのは難しかったはずだ。
(ていうか、アイツ意外と擦れてるしね)
まぁ、アイツはアイツであの艦長と腹の探り合いが出来るような輩なのだから仕方がないと言えば仕方がない。それにあの何とかいう執務官の第一印象が悪すぎた。いや、別にアイツが悪い訳でもないのだけれど。悪かったのはタイミングというか何と言うか……。
(それにしても……)
どうやら管理局勤めも楽じゃないらしい。職務と人情の間で奮闘する艦長とその息子の姿を見るとしみじみとそう思う。と、それはともかく――脱線しつつあった思考を元に戻す。もっとも、元にと言うほど目的のある考え事などしていないが。
(外に出れないってのはどうにかなんないかねぇ)
自分達がしでかした事を考えれば、破格な待遇だというのは分かっているが――それでも、部屋から自由に出れないというのは息苦しい。アタシの本質
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