魔石の時代
終章
ある家族の肖像
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り憑かれていたという事になっているが――端的に言ってそれは嘘なのだから。ばれれば彼女達の首が飛ぶ。いや、それどころか彼女達までが犯罪者として追われる事になるのは疑いない。
「何故、私を助けてくれるのかしら?」
ずっと抱いていた疑問だった。異界の魔導師――私達の恩人であるあの黒衣の魔法使いの理由は聞いたが、それでも疑問が消えたわけではない。仮にあの魔法使いを恐れているとして――それでも、自らの本拠地に連れて帰ってしまえばそれまでだろう。何故、彼との約束を守るのか。
「私も一児の母親だから。子どもから母親を奪う訳にはいかない。もちろん、その逆も。きっとそれが理由ですよ」
だから、今のあなたに協力を惜しむつもりはない――何てことないように、彼女は笑ってみせた。
「変わり者だって言われない?」
「……時々は。昔から損な性格だってよく言われたわ」
「でしょうね」
彼女ほどの才覚があれば、もっと要領よく生きる事は出来るはずだ。それにも関わらず、世界を滅ぼしかけた大罪人を庇おうとする。
「でもいいのよ、これで。あなた達を救う事が出来て、改めてそう思うわ」
みんなを守りたい。そんな願いから、私は管理局に入局したのだから――彼女はそう言った。今もそれは変わらないと。
「光君はそのために出来る事をやりきった。私も負けないようにやり切るわ。だから、あとはあなた達次第よ」
それに、と彼女は笑ってから――よく意味のわからない事を言った。
「たかが状況にも意地があるって事を伝えておかないと、ね」
2
多分、私は夢を見ているのだ――不思議なほど鮮明な意識の中で、それだけを確信する。きっと、これは夢なのだと。だから、
「本当にこれでよかったのか?」
黒いマントを羽織った金髪の女性。凛として、それでも酷く哀しい目をした彼女――ニミュエは今私に問いかけてきているのだ。
「普通じゃない方法で生み出された、誰かの複製品。そんな在り方に、そんな生き方に本当に耐えられるのか?」
複製品――その言葉は、確かに今も胸を刺すけれど。それでも、
「もちろん」
私は笑って返していた。複製品だと言われて、胸が痛むのは私がアリシア・テスタロッサではなくフェイト・テスタロッサだから。この痛みだって私が私である証だった。
「私の物語はきっとこれから始まるんだ。それに、例え普通じゃない方法で生み出されたとしても――」
それに、私が生まれた理由。それは、アリシアが愛されていた証拠だから。それにはきっと意味がある。確かに母さんがお腹を痛めて生んだ子ではなかったとしても――心を痛めて生んでくれたのは間違いない。だから、本当にショックだったんだと思う。私がアリシアではなかった事が。こんなにも優しい人が狂ってしまうくらいに。それでも、母さんは私を――フェ
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