第3部 始祖の祈祷書
第3章 始祖の祈祷書
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いて、ルイズはちょっと悲しくなった。
幼馴染のアンリエッタは、政治の道具として、好きでもない皇帝と結婚するのだ。
同盟のためには仕方がないとはいえ、ルイズはアンリエッタの悲しそうな笑みを思い出すと、胸が締めつけられるような気がした。
ルイズは黙って頭を下げた。
オスマンは、しばらくじっと黙ってルイズを見つめていたが、思い出したように手に持った『始祖の祈祷書』ルイズに差し出した。
「これは?」
ルイズは、怪訝な顔でその本を見つめた。
「始祖の祈祷書じゃ」
「始祖の祈祷書?これが?」
王室に伝わる、伝説の書物。
国宝のはずである。
どうしてそれを、オスマンが持っているのだろう?
「トリステインの王室の伝統で、王族の結婚式の際には貴族より選ばれし巫女を用意せねばならんのじゃ。選ばれた巫女は、この『始祖の祈祷書』を手に、式の詔を詠みあげる習わしになっておる」
「は、はぁ」
ルイズは、そこまで宮中の作法に詳しくはなかったので、気のない返事をした。
「そして姫は、その巫女に、ミス・ヴァリエール、そなたを指名したのじゃ」
「姫様が?」
「その通りじゃ。巫女は、式の前より、この『始祖の祈祷書』を肌身離さず持ち歩き、詠みあげる詔を考えなくてはならぬ」
「えええ!詔を私が考えるんですか!」
「そうじゃ。もちろん、草案は宮中の連中が推敲する。これは大変に名誉なことじゃぞ。王族の式に立ち会い、詔を詠みあげるなど、一生に一度あるかないかじゃからな」
アンリエッタは、幼い頃、共に過ごした自分を式の巫女役に選らんでくれたのだ。
ルイズはきっと顔をあげた。
「わかりました。謹んで拝命いたします」
ルイズはオスマンの手から、『始祖の祈祷書』を受け取った。
オスマンは目を細めて、ルイズを見つめた。
「快く引き受けてくれるか。よかったよかった。姫も喜ぶじゃろうて」
オスマンとルイズの会話が終わると、ウルキオラが怠そうに口を開いた。
「それで…俺を呼んだのは何故だ」
オスマンは、ウルキオラに向き直った。
「実はの…君に見せてもらいたいものがあるのじゃ」
「見せてもらいたいものだと?」
ウルキオラはオスマンを見た。
オスマンに見せるべきものなど、何一つない。
そう言いたげな目である。
「以前、姫とミス・ヴァリエールに見せた映像を見たいのじゃ」
そのオスマンの言葉に、今まで黙っていたコルベールが口をはさんだ。
「映像?それは一体どのような映像なのですか!」
コルベールはウルキオラに詰め寄った。
ウルキオラはそれを無視した。
面倒だと思った。
「断る」
オスマン
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