魔石の時代
第五章
そして、いくつかの世界の終わり5
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鎮静も念入りに行わなければならない。もちろん、経過の観察も必要だった。もっとも、ジュエルシードによってもたらされる『魔物化』は後遺症も残さず快癒する事が実証されている。何故そうなるのかについても興味深いが、今は置いておくとして……プレシアの場合も基本的にはジュエルシードによるものである事に変わりはない。今までの例から考えて、鎮静どころか完治を目指せるはずなのだが、
(ほんの一瞬とはいえ『奴ら』の力が介入した可能性があるからな)
プレシアが世界を引き裂こうとした瞬間、確かに『奴ら』の気配を感じた。かつてジュエルシードを作りだした民族が何を思ってそれを作成したかについては、ユーノにも分らないそうだが……ともあれ、あの力は聖杯もしくは『楔』に近似する。少なくとも世界を引き裂こうとしたあの瞬間には、あの魔石は限りなく聖杯に近づいていた。だからこそ、プレシアにだけ代償が残ったとも考えられる。それなら用心しておくに越した事はない。
(あるいは、彼女の資質がなせる技かもしれないな)
彼女の力は凡百の魔導師とは一線を画す。今回はそれが裏目に出ただけという可能性も否定はしきれない。ともあれ、
「さて、頑張ってと言われてもな……」
なのは達を見送ってからため息をつく。
『ま、どう頑張っても今のところ経過観察くらいしかやる事ねえよな』
プレシアにはすでにエレイン――二代目ゴルロイスが遺した鎮静魔法を施してあった。つまり、ここしばらくの間俺が使っていた物と同じ包帯がその右腕に巻かれている。もちろん、それで魔物化を完全に防げる訳ではない。しかし、その封印を破ってまで魔物化するほどの強い要因もなかった。文明や文化の違いというのもあるだろうが、リンディ達も『魔物化した』という事実に対して特別な偏見を抱いている様子はない。もちろん、有耶無耶になったとはいえ犯罪者である。そういう意味ではある程度以上の警戒はしているだろうが、その半面で――実際に反映されるかどうかは別としても――情状酌量の余地もまた認めていると考えていい。周囲の理解はあるとみていいだろう。
フェイトの不調がきっかけで情緒不安定になった以上、関係修繕の意思はあるものと考えられる。実際に彼女は一日中付きっ切りで娘の傍にいる。……もっとも、本人も本調子ではないため、最終的には医者に止められたようだが。その間、フェイトも満更でもなさそうだった。もちろん、そう簡単に解決するような問題でもないのだろうが……それでも本人達に歩み寄る意思がある限り、あとは時間が解決してくれるはずだ。
「それはそれで構わないんだがな」
本人に贖罪の意思があり、かつ周囲の理解を得られているというなら、魔物化が再発する危険は随分と下がる。それは過去の傾向からして明らかだった。フェイトの不調もあくまで一時的なものであり、実際すでに回
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