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その魂に祝福を
魔石の時代
第五章
そして、いくつかの世界の終わり5
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ある。結局のところ、殺すなんて選択は初めからなかった。
「……きっとあなたに救われた直後だったんでしょうけど」
 幸い彼女達も一発ぶん殴ったらそれで満足したらしいしな――右腕を軽く振りながら笑って見せると、プレシアが小さく呟いた。
「あの子は……アリシアはずっと妹を欲しがっていたのよ」
 魔力もジュエルシードも失い、自分の望みは全て断たれた。あとに待つのは死しかない――そう思って意識を手放す直前にその約束を思い出した。プレシアはそう言った。その声は震えていた。それ以上は言葉にならないのだろう。
「あの子の残した願いは……あの子が生きた証は、私の希望になってずっと傍にいてくれたのね。それから目を逸らしていたのは私の方」
 嗚咽にも似た吐息を吐きだしてから、彼女は凛とした声で言った。
「もう目を逸らさない。逃げもしない。今度こそ私はあの子の願いを受け継ぐ」
 静かにフェイトに右手を差し出した。そして、問いかける。
「信じてもらえるかしら?」
「うん!」
 フェイトがその右腕をしっかりと握り返す。
「……ありがとう」
 そのままフェイトの身体を抱き寄せ、プレシアは言った。その声は少しだけ震えていた。フェイトの頬にも涙が伝う。その姿を見届けて――右腕が軽くなった。ほんの微かに燻ぶっていた衝動の残り火が完全に消え去り……その代わりに別の感情が伝わってきたように思えた。それは嫉妬であり、羨望であり、そして――新たな始まりを迎えた親子に対する、不器用な祝福でもあった。




 今度こそ一通りの説明を終え、ようやく解散の雰囲気が漂い始めた頃の事である。
「そう言えば、もう一つ訊きたい事があるのだけれど」
 またもそんな事を言い出したリンディに思わず、舌打ちをしそうになった。
「そんなに嫌そうな顔しないでもいいんじゃないかしら」
 どうやら表情に出ていたらしい。俺もまだ未熟と言う事か。ともあれ、
「これ以上何を絞りだそうって言うんだ?」
 いい加減ネタ切れだと思うが。これ以上は、少々都合が悪い。
「だからそんな大げさな事じゃないわ。ちょっとした疑問よ」
 そんな前置きをしてから、リンディは言った。
「何でリブロムさんは、なのはさんの事をそんなに苦手にしているの?」
 その言葉になのはも全力で頷いている。フェイトまでもが興味ありそうな顔でこちらを見ていた。……まぁ、実際のところ、それくらいなら確かに大した事ではない。
「ま、多分びっくりしたんだろうけど……」
 ただ、何と説明したものか――自分でもよく分からないまま、取りあえず話し始める。
「昔なのはと二人で留守番してた時の事だ。夏だったから窓を開けっぱなしにしておいたんだが……うっかり網戸も開けちまってたらしくてな。俺が部屋を空けている間に蛾が迷い込んできたらし
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