魔石の時代
第五章
そして、いくつかの世界の終わり5
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する事で孤独から解放された訳だが……今度は娘、ニミュエの方が孤独に囚われる事になった。普通ではない方法で生み出された誰かの複製。それを知った時から。普通の世界全てに対する恨み、妬み、憎悪……そして、その身勝手さに対する自己嫌悪。それらが混ざり合い、やがて殺戮衝動となっていった。とはいえ、彼女の母親は優れた魔法使いだった。当時の彼女が殺せるような相手じゃあない。今となっては確かめる術もないが、アヴァロンへの加入を求めた理由として力を欲していたという面が全くなかったとは思えないな」
ともあれ、その殺戮衝動はいずれ恩師に受け継がれ――どうやら、俺にも受け継がれていたらしい。例え、ほんの僅かな残滓に過ぎないとしても。
「その後、恩師は殺戮衝動を鎮める術を求めて各地を旅しながら、右腕の彼女と対話を続け、その果てに答えを見つけ出した。もっとも、出くわした時にはすでにモルガンは魔物に堕ちていた訳だが。……そして、全てが終わり、その魂を取り込んで初めて全ての真相を理解する事になった」
ニミュエの出生にまつわる真相。それを知る事が新たな悲劇の――世界の終わりの始まりとなる訳だが、それは今触れるべき事ではない。
「つまり、恩師の右腕には彼女の母親の魂も宿っていた。どうやら、恩師の全てを受け継いだ俺にもそれが受け継がれていたらしいな。だからこそ、あんなにも急激に殺戮衝動の侵蝕が進んだんだろう」
「どういうことかしら?」
「だから、自分とよく似た境遇のフェイトと出会った事で、まずニミュエの魂が目覚めたんだろう。それと同時、モルガンもまた自分とよく似た事をしながら『娘』に愛されている存在を知ったんだ。しかも、その『母親』はそうでありながら、『娘』に暴行を加えているとなれば、それはさぞかし不満だっただろう。それこそ、その『母親』に対する恨み、妬み、憎悪……そして、その身勝手さに対する自己嫌悪ってところか。元々魔物化していた事も併せれば、その怨念はニミュエにも負けないだろうさ」
もっとも、目覚めた真相――本当のきっかけは、おそらくもっと素っ気ないものだろうが。いや、むしろ奇跡的なのか。まったく、俺が言うのも何だがもう少しマシな方法があっただろうに。
(まぁ、いいか。俺もニミュエ達のお節介だと思っておくさ)
実際のところ、彼女達の『意思』が干渉してきたのは紛れもない事実だろう。そうでもなければ、今さら殺戮衝動が蘇る訳もない。そして、ニミュエ一人だったなら恩師と同じく一〇年程度は持ったはずだ。だが今回は、単純に考えて二倍。二人の関係を考えれば、相乗効果も大幅に見込めそうだ。そんなものを抱えていれば、半月足らずで堕ちそうにもなる。むしろ、我ながらよく持ったものだ。
「……そんな危険な状況でありながら、何故私を殺さなかったの?」
静かに問いかけてきたのは、プレシア
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