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その魂に祝福を
魔石の時代
第五章
そして、いくつかの世界の終わり5
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自分にどこまでの事が出来るかと言われると――いささか心許ないが。
それにこうして出会ってしまった以上、それ以前の状態に戻す事はできない。これから先、嫌でも管理局の影響は受けざるを得まい。向こうが滅びるか、こちらが滅びるか。束縛から抜け出せる時が来るとすればそのどちらかだ。
あの魔石は確かに世界を滅ぼしたのだ。あの子が――なのはが魔法とは無縁で過ごせる世界はすでに消え去った。あの魔石となのはが関わった時からすでに。そんな事は分かっていた。これからできる事はその脅威をどれだけ取り除けるか。ただそれだけだ。
「ええ。分かっているわ」
 我ながら安い恫喝だったが――それでも向こうが曖昧にし、かつ浸蝕しようとした境界線をもう一度明確にする程度の効果はあったらしい。具体的にどうという訳ではないが、リンディが一歩引いた事くらいは分かった。信頼を築く事と慣れ合う事は違う。少なくとも、彼女はその違いが分からないほど愚かではない。だから、言っておく。
「宮仕えは大変だな」
 リンディがいくらをそれを分かっていたとしても、彼女の上官が――ひいては管理局とやらの『総意』がそれを理解しているかと言われれば、それは怪しいところだ。そんな事は、おそらくリンディの方がよく分かっているだろう。
「ええ、本当にね」
 何度目かの交渉――あるいは脅迫か――の失敗を悟って、リンディはため息をつく。もっとも、ため息の理由がそれだけだとは思わないが。
「でも、私個人としてもこれだけは伝えておきたいのだけれど――」
 抹茶を――例によって角砂糖入りだ。おそらく彼女達の世界ではそれが一般的なのだろう。そう思う事にした――啜ってから、リンディは言った。
「私達の仕事は世界の平和を守る事よ。でも、あなたも知っての通り、お世辞にも人手が豊富とは言えない。だから、あなたの……あなた達の力を借りたい。世界を守るために」
 その言葉には誠意があった。今までで最も、と言っていいだろう。つまり、これは間違いなくリンディの本心だった。
「なのはが……あるいはフェイト達が本当に自分の意思でその選択をするなら、それは止められないだろう。特にフェイト達にとっては管理局に勤めるというのは魅力的な提案なのかもしれないしな」
 それでも、反対はするだろうな――そんなこと思いながら、ため息と共にその言葉に応じる。こちらも相応に腹を割って話す必要があるだろう。
「だが、今は駄目だ。まだあの子達は幼いし、学ぶべき事は多い。だが、お前達の影響力は強すぎる。それはあの子達が他の生き方を知り、自分の生き様を自分で選ぶための道を閉ざすだろう。だからこれ以上関わらせるつもりはない。少なくともお前達の存在がただの選択肢の一つにならないうちは……魔法使いになるという道が、自分にとって単なる選択肢の一つに過ぎないのだと理解で
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