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その魂に祝福を
魔石の時代
第五章
そして、いくつかの世界の終わり5
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直す事もまた不可能ではなかった。それこそが、自分が世界に打ち込んだもう一つの『楔』なのだから。だから、使い方次第では『聖杯』のようにも振舞う事は出来る。自分がそうであるように。
 その写本が未来の担い手として誰を選ぶか、それは書き手の自分にも分からない。だから、読み手が世界をやり直すという選択をするのであれば、それはおそらく止められない。だが――その気難しい魔術書が選んだ人間であれば、何をすべきかは自ずと分かるはずだ。かつての自分が知りえる限りでも、何人かの読み手が誕生し――その誰もが世界をやり直す事は選ばなかった。だから、かつての自分は未来を誰かに託す事が出来たのだろう。そう言っていいはずだ。
 未来を目指す者がいる限り、その写本は今も世界のどこかにある。誰にも名前を知られることなく、それでもただ静かに待ち続けているはずだ。
 いや――名前を知られていないというのは間違いか。その写本……その魔術書は、長い歴史の中で聖典とも呼ばれる様になった。最初の読み手となった魔法使いの名と共に。
 自分の持ちうるすべての魔法を――自分に連なる全ての名もなき人達が……無数の魔法使い達が積み上げてきた叡智全てを記したその魔術書は、今も世界のどこかで静かに眠っているはずだ。
 誰かが犠牲になるような世界を変えたい。そう願う誰かを。その覚悟を持った誰かを。未来を託すに相応しい読み手がその手を伸ばすまで。
 おそらくはそのための希望となるであろう、何人もの読み手の生きた証を記して。




「母親、ね……」
 呻いたのは、プレシアだった。確かに、我が身を省みて状況と照らし合わせれば当然だろう。ついでに言えば……残念ながら、それは的外れでも何でもない。
「でも何故?」
 問いかけてきたのは、リンディだった。
「それには彼女……ニミュエの出生が関わってくる」
 さて。ここで一つ厄介な話をしなければならない。もう失われた代物だが――管理局の興味を引きかねない、あらゆる願いを叶えるとされる伝説の杯……聖杯が関わってくるのだから。慎重に言葉を選び――話を多少改訂しながら続ける。
「まず彼女の『母親』についてだが、言うまでも無く魔法使い……それも、強大な魔力を持つ魔女だった。彼女には相棒……というより、伴侶と言うべきかな。つまり、最愛の男性がいた。もちろん、その男も魔法使いだった」
「その二人の間に生まれた子どもがニミュエさん?」
 フェイトの問いかけに首を振る。そうであれば、殺戮衝動は生まれなかっただろう。
「残念だが、少し違う。まず彼女の相棒について少し話しておこう。おそらくモルガン――『母親』の名前だが――と出会った時には……遅くても彼女と旅をしている頃には彼はすでに記憶を混濁させつつあった」
「記憶を混濁?」
 呟いたのはクロノだ。軽く頷
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