第三章
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第三章
「今から一旦家に帰ってそれから」
「最近話題になってますよね」
美奈子もその整った顔に憂いを見せて述べた。その顔は心から心配そうであった。
「昔に出たっていう」
「そうですね。九条さんも御存知だったんですね」
「実はですね」
美奈子は憂いを漂わせた顔をそのままに彼に話してきた。
「私の夜勤もですね」
「何かあるんですか?」
「時々外に出て見回ってるんですよ」
そうしているというのである。
「院長さんが話を聞いて子供達に何かあったらいけないって言って」
「それでなんですか」
「大体三人とか五人でチームを組んで見回っています」
そうしているというのである。
「流石に一人だとこっちが危ないので」
「そうですよね。女の人が夜に外で一人なのは危ないですからね」
それはわかる悟志だった。
「流石に」
「これでも私空手五段ですけれどね」
笑って言う美奈子だった。
「うちの病院の娘達って皆柔道や空手とかやってるんですよ」
「そうなんですか」
「それで皆黒帯です」
こんな話もするのだった。
「ですから相当な相手でも大丈夫ですけれどね」
「それもあって夜の見回りをしてるんですか?」
「はい、それもあります」
一人では危ないがそれでも腕を買われてのことでもあるのだという。相反するがそれでも今見回っているのは事実であった。
「それで夜勤の合間にです」
「街の見回りをですね」
「やっています。残る娘は残ってですけれど」
「成程。そうされてるんですね」
「はい、そうです」
そうしているというのだ。
「口裂け女が出て来たら退治してやります」
「同じですね。本当に」
「はい、先生も頑張って下さい」
「わかりました。それじゃあ」
こう言葉を交えさせてそのうえで別れた。そうして悟志はアパートから木刀を取って来てそれから口裂け女を探しに出た。アパートを出た時は夜になっていた。
夜の市内を自転車で見回る。背中に木刀を何本も担ぎ自転車の籠にポマードとべっ甲飴を持っている。口裂け女が何時出て来てもいいように身構えている。
「さあ来い」
彼は意を決してその妖怪か幽霊かわからないものを探していた。
「何人でもな」
夜の市内に見えるのは灯りと家だった。他は塾や学校から帰る子供や学生達、それにサラリーマンやOL達だ。口裂け女は見当たらない。
「いないな」
何時間か見回ったが何処にも見えなかった。
「やっぱりただの噂かな」
それでこう思いはじめた。左手にしている腕時計を見るともう十一時を回っていた。
その時間を見てだった。悟志はこう思った。
「帰るか」
この日は帰って休もうと思った。次の日にまた見回ろうと思った。その時だった。
目の前に一団が出て来た。それは
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