Interview3 鍵の少女、殻の悪女
「泣かないで、可愛い子」
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エラール街道の遙か頭上にそびえるレールの陸橋。その陸橋は、それの倍の高さを誇る時計塔を貫いて走っている。
時計塔の回転灯がとうに沈黙した、朝の時刻。その時計塔の天頂に、イリスは立っていた。
「発展した都市を一歩出れば不毛の大地。これが黒匣を2000年使い続けた成果か――」
イリスは花開くように笑んだ。心から嬉しかったのだ。人類が黒匣という、人類の英知の極致を最大限に活かして、自らの営みを豊かにしてきたのが。
緑が一本も芽吹いていない無機質な都市が、イリスには堪らなく愛しかった。
その進化を、成長を祝福するように、イリスはメガロポリスの輪郭を宙でなぞった。
(これを守るためにも、必ず奴らを抹殺しなくちゃ。オリジン、クロノス、マクスウェル。イリスの、誰よりあの方の子どもたちを無為に死に追いやってきた、悪逆非道の精霊ども)
慰撫の手を拳に変えて、天へと向ける。
(待っていなさい。もうすぐこのイカれたゲームをメチャクチャに叩き壊してやるから)
遠くから列車がレールを走る音が届いた。ほどなくして、特別列車ストリボルグ号が街からぬうっと現れた。
ストリボルグ号はじきにイリスが立つ時計塔の中を通過する。イリスは何気なく列車を見下ろし――懐かしい気配に小さく瞠目した。
(二つ……地下で会ったあの子と、もう一人……)
列車が塔に差しかかった時、イリスは時計塔から無造作に身を投げた。
展望室のガラス天井が割れた瞬間、ルドガーはエルを押し倒して覆い被さった。とにかく彼女に傷をつけるような事態はあってはならない。ルドガーはありったけの力でエルを抱きしめていた。
やがて破砕音が収まって、列車がちょうどトンネルの暗がりを抜けた。
「ぷはっ。終わった?」
「あ、ああ、多分」
「くるしかったー」
「ごめんごめ…ん…」
言いながら起き上がり――ルドガーはこの日、レイアより、ビズリーより、ユリウスよりも驚く人物と遭遇した。
ふわり。髪をストールのように翻し、デッキに舞い降りた灰紫の女。
今日の彼女は裸ではなかったが、布一枚だけを巻いたあられもない姿。しかもその布も、早回しの映像のようにどんどん黴が生えていっている。
彼女はルドガーのちょうど真正面に浮遊してくると、優しく微笑した。
「ひさしぶりね、あの方の血を最も濃く引く末裔」
「イリ、ス――」
ルドガーの心を1年前から鷲掴みにして離さなかった女が今、目の前にいた。
「っは――あんた、今までどこいたんだよ。俺がどれだけ心配したと思って…一人だけ突っ込んで…ずっとどうなったか、思い出すたびに不安で…」
「泣かないで、可愛い子
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