Interview3 鍵の少女、殻の悪女
「男なら責任持てよ」
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ルドガーは内心で仰天した。
――ビズリー・カルシ・バクー。天下にその名轟かすクランスピア社の代表取締役。彼失くしてエレンピオスの市場は回らないと、経済界の誰もが認める傑物。
列車に乗るところは見たが、まさか自分が会うことになろうとは。
「もっとも、君のような黒匣なしの算譜法は、エレンピオスの人間には些か荷が重いが」
「お怪我がなくてよかったです、ビズリー社長。ヴェル秘書官も」
レイアは揶揄を含んだ賛辞には触れず、鮮やかに切り返した。初対面の頃から比べてレイアの記者スキルは格段に向上している。
会話の流れから察するに、レイアはテロリストと打ち合う内にビズリーと鉢合わせしたのだろう。そこから護衛を買って出たという所か。ブレない少女である。
「そちらも。なかなかの腕をお持ちのようだ。私はクランスピア社代表、ビズリー・カルシ・バクー。君の名は?」
「ルドガー、です。ルドガー・ウィル・クルスニク」
「ウィル・クルスニク……ユリウスの身内か」
ルドガーが答えるより早く、ヴェルがGHSを見ながら事務的に言った。
「本社のデータにありました。ルドガー様はユリウス室長の弟です。――母親は違うようですが」
「え」
表には出さなかったが、ルドガーは動揺した。
母親が違う。そんな話はユリウスから聞いたこともない。
「構えがそっくりなわけだ。お兄さんには、いつも助けてもらっているよ」
ビズリーが大きな掌を差し出す。ルドガーは迷ったが、双剣を近くの座席に立てかけ、応じてビズリーと握手した。
「こちらこそ、兄がお世話になってます」
母親の件は後だ。今は今、目の前にあることを。
直後、列車が急加速した。
かららん、と双剣が座席から転がり落ちる。ルドガーはとっさに横のエルが転ばないように支えた。
「始めたな、アルクノアども」
「アルクノア!?」
「連中、和平政策を支持する我が社を目の敵にしていてね。おそらく、この列車をアスコルドに突っ込ませるつもりなんだろう」
説明しながらもビズリーは慌てる様子はない。控えるヴェルのポーカーフェイスも揺らがない。
だが、このままではこの列車と心中するはめになるし、アスコルドの工員や招待客、まだ息がある乗客も全員が道連れだ。
「止めないと――」
「うん、止めに行こう! ルドガー」
パロットグリーンの瞳には決意が滾っている。こうなったレイアは止められないと今日までの付き合いで熟知していた。
思い留まるよう諭そうとした男心をぐっと堪え、ルドガーは肯いてみせた。
「どうやってとめるの?」
エルが不安いっぱいの声で問うてくる。
「先頭車両に行く。運転席をいじったんだろ
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