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口裂け女
第二章
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第二章

「どっちにしても」
「また随分と簡単に言うね」
「俺はあまりよくは知らないですけれどね」
 今度はこんなことを言う彼だった。
「あれですよ。いたらそれで退治したらいいじゃないですか」
「倒す方法があるのわけないじゃないか」
 先生は何を言っているんだといった顔で悟志を見た。
「和久井先生は口裂け女のことを知らないんですよ」
「ええ、知らないです」
 それは悟志もはっきりと認めた。
「けれどあれですよね。ポマードが嫌いなんですよね」
「そうだよ。口裂け女はね」
 それはよく言われていることだった。これも三十年前から言われていることである。
「べっ甲飴は好きだけれどポマードはね」
「それじゃあまずはこの二つを持ってですね」
「口裂け女を探すのかい」
「はい、まずはそうします」
 こう言うのだった。
「それでポマードで退治します」
「下手したら鎌で切られるよ」
 藤熊先生が今度言ったのはこのことだった。
「大鎌で電話ボックスを真っ二つにしたこともあるそうだし」
「まるで死神ですね」
 悟志がそこから連想したのはそれだった。
「そこまでだと」
「そうだね。とにかく滅茶苦茶強いとは思っていいよ」
「わかりました。じゃあ俺も木刀持って行きますんで」
 彼は剣道五段である。全国大会にも出たことがある。腕には自信があるのだ。
「ちょっと頑張って来ます」
「そうか。それじゃあ頑張るんだね」
「はい、とりあえずやって来ます」
 こう軽い調子で悟志は口裂け女退治に向かうことにした。とはいっても具体的には本当にいるのかどうか確かめるのだったが。
 口裂け女が出るのは夜だ。従って彼は夜に探すことにしたのだった。
 その前に家に帰る。木刀を持って来る為だ。その途中で。
「あっ、和久井先生」
「こんにちわ」
 その途中で一人の美人と出会い挨拶をする。同じアパートに住んでいる九条美奈子である。細長い眉に勝気そうだがやや釣っていて整った目に大きな口をしている。髪を長く伸ばしてそれを右で七三に分けている。その彼女がにこりと笑って悟志に声をかけてきたのだ。
「といってももうすぐ夜ですね」
「ふふふ、そうですね」
 美奈子は笑って彼に言葉を返してきた。
「今お帰りですか?」
「はい」
 美奈子の問いに素直に答える。
「そうなんですよ」
「そうですか。私はこれからです」
「大変ですね。看護婦さんも」
 彼女の仕事は知っていた。他ならぬ彼女から聞いたのである。
「夜勤があって」
「いえ、そうでもないですよ」
 しかし美奈子はこう言うのだった。
「その時は昼は休めますから」
「だからですか」
「はい、ですから」
 大丈夫だというのである。
「今から言ってきます」
「では頑張って下
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