アインクラッド 後編
それが、本当のわたしだから
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れど立派な、竜の形だった。
光は全身に生えた羽の一枚一枚までを丁寧に描き終えると、自分の役割は終わったと言わんばかりに一瞬だけ閃光を放ち、その欠片を周囲に飛散させた。
「きゃっ!?」
強烈なフラッシュに思わず目を閉じてしまったわたしたちが、再び瞼を持ち上げる。すると――
「きゅるっ!」
――――!!
わたしたちは一様に目を見開いた。
白い光の破片が羽毛のように部屋を満たした中心で、全身を水色の羽で包んだ一頭の竜が、力強く羽ばたいていた。細長い尻尾の先で、身体が上下するのにあわせ、主人との再会を喜ぶように心が揺れている。
「ピナ……なんだよね……?」
「きゅるっ!」
呼びかけられた小さな竜は、シリカちゃんをじっと見つめると、嬉しそうに目を細めてその胸に飛び込んで行った。途端に、シリカちゃんの表情にぱぁっと光が差し込んだ。
「わぁ……ピナ、本当にピナだ……! ピナ、ごめんね、ピナ……!」
シリカちゃんから溢れた感情の渦が、何度も何度も部屋中を震わせた。涙でぐしゃぐしゃになった顔をピナの胸に擦りつけ、ピナもまた、そんな主を慰めるように小さな顔でシリカちゃんの髪を梳く。
その姿は、ただのテイムモンスターだとは到底思えないものだった。主との別れを悲しみ、再会を喜ぶ、本物の心を持った、深い深い絆で結ばれた本物の友人としか。
――良かった。本当に、良かった。
心からそう思う。そう思っているはずなのに……何故かわたしの心の一部が、未だに鋭い痛みを訴え続けていた。眼前の光に照らされて、わたしの心に一筋の影が差す。
……わたしには、あんな友人はいないから。わたしは、独りだから。
そっと両手を胸の前で抱きしめて、抱き合っているシリカちゃんとピナを見つめた。せめて、この光景を思い出して、そこから漏れた温かさに当たれるように。
そんな時だった。
「きゅるるっ!」
「え……?」
目の前に、今の今までシリカちゃんと抱き合っていたはずのピナが、二枚の翼をゆったりと羽ばたかせて浮かんでいた。わたしが思わず両手を少し広げると、ピナはその上に着地して、長い首を伸ばしわたしの頬をちろちろと舐めてくる。
「わ、きゃ……」
「ピナも、エミさんにお礼がしたいみたいですよ」
こそばゆくなってわたしが首をすくめると、シリカちゃんがそう補足した。
――そう、なの……?
――きゅるっ! きゅるるっ!
すぐ近くにあったピナの両目を見つめて、視線で訊ねる。その答えは、当然ながら要領を得ないものだったけれど……二つの真っ赤な瞳が、頷くように小さく縦に揺れた。直後、ピナはわたしの腕から飛び立って、そのふわふわの身体をわたしの肩から首にかけて巻きつけた。
「き
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