暁 〜小説投稿サイト〜
クルスニク・オーケストラ
第十一楽章 少し早いピリオド
11-1小節
[2/2]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
心から信じるから。ねえ、ねえ…ッ!

「……嬉しいですわ。貴女みたいに、わたくしのために泣いてくれる友達が一人でもいて。こんな体だから、きっと最期まで独りだと思っていましたのに。嬉しいの。本当に嬉しいのよ、ヴェル。嬉しい、のに」

 ジゼルは笑ってる。笑ってるのに、涙、が。

「ねえ、ヴェル…っ、これは、誰の涙なのかしら…っ? わたくしっ…何で、泣いて…っ」
「っ…! それは! あなたの涙よ! どの《レコード》でもない、あなた自身の悲しみなのよっ、ジゼル!」

 ――ジゼルが泣くとこなんて初めて見た。いつも笑ってて、明るくて、探索エージェントたちに光を振り撒いていたジゼルが。

 ジゼルを抱き寄せる。ジゼルはあっさり私の肩に頭を押しつけ、嗚咽を上げた。ジゼルの両手は縋るみたいに私の両肩を掴んでる。

 何で忘れていたの。ジゼルだって、私よりは年上だけど、骸殻があるだけの、ただの女の子だったのに。

 思いきり抱き締めてあげる。気づくのが遅すぎた私にはこれくらいしかできない。

 私も泣いた。二人して抱き合って泣いた。死にたくない、死なせたくない、そんなことを言った気もする。
 泣き疲れて涙も枯れたところで、ジゼルはゴシックアウターの袖で私の目元を拭った。
 その顔には笑み。いつもそうやって、あなたは笑ってきたのね。


「ヴェル。最後に一つだけ、お願いがありますの」
「何? 何でも言って」
「最後の《カナンの道標》がある分史世界の座標を教えて」
[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ