第十一楽章 少し早いピリオド
11-1小節
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心から信じるから。ねえ、ねえ…ッ!
「……嬉しいですわ。貴女みたいに、わたくしのために泣いてくれる友達が一人でもいて。こんな体だから、きっと最期まで独りだと思っていましたのに。嬉しいの。本当に嬉しいのよ、ヴェル。嬉しい、のに」
ジゼルは笑ってる。笑ってるのに、涙、が。
「ねえ、ヴェル…っ、これは、誰の涙なのかしら…っ? わたくしっ…何で、泣いて…っ」
「っ…! それは! あなたの涙よ! どの《レコード》でもない、あなた自身の悲しみなのよっ、ジゼル!」
――ジゼルが泣くとこなんて初めて見た。いつも笑ってて、明るくて、探索エージェントたちに光を振り撒いていたジゼルが。
ジゼルを抱き寄せる。ジゼルはあっさり私の肩に頭を押しつけ、嗚咽を上げた。ジゼルの両手は縋るみたいに私の両肩を掴んでる。
何で忘れていたの。ジゼルだって、私よりは年上だけど、骸殻があるだけの、ただの女の子だったのに。
思いきり抱き締めてあげる。気づくのが遅すぎた私にはこれくらいしかできない。
私も泣いた。二人して抱き合って泣いた。死にたくない、死なせたくない、そんなことを言った気もする。
泣き疲れて涙も枯れたところで、ジゼルはゴシックアウターの袖で私の目元を拭った。
その顔には笑み。いつもそうやって、あなたは笑ってきたのね。
「ヴェル。最後に一つだけ、お願いがありますの」
「何? 何でも言って」
「最後の《カナンの道標》がある分史世界の座標を教えて」
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