4部分:第四章
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第四章
「君があそこまで乱れるなんて」
「夢で」
ふと夢のことを夫に出したのだった。
「夢で見たから」
「夢で?」
「ええ。夢で見たのよ」
夫に対して言葉を出し続けていく。
「だから自然に。それで動いてしまって」
「そうだったんだ」
「考えてみれば本当に不思議ね」
彼女もまた不思議という言葉を口に出したのであった。
「こうしたことになるなんて」
「そうだね。夢が現実になったんだ」
「こんな夢見るなんて思わなかったけれど」
これは実際にそうであった。今でも半分以上信じられないでいる。
「私がこんな、ね」
「僕もね。けれど」
「けれど?」
「よかったよ」
これが夫の言葉であった。そして考えでもあった。
「今までになかったことだからね」
「そうね。よかったわ」
それは彼女も同じだった。今までになかったことだが実際に経験してみるとだった。実に満足するものであったのは間違いなかった。
「とてもね」
「また。しようか」
夫の方から言ってきた。
「今から。どうする?」
「そうね」
今はそのけだるさの残る顔で応える彼女だった。
「それじゃあ」
「ただ」
また言ってきた夫であった。
「その相手だけれど」
「相手!?」
「君じゃなければ駄目だよ」
こう彼女に告げてきたのだった。そのけだるい顔を彼もそのままにしている中で。
「僕は君じゃなければね」
「私もよ」
そしてそれは自分もだと。真理子も答えた。
「相手はね。あなただけよ」
「そうだよね。まさかこんな気持ちになるなんて」
「わかったわ」
そして真理子は言うのだった。
「あれはあなただったのよ」
「その夢の相手だよね」
「そうよ。あなただったのよ」
鏡に映る夫を見ながらの言葉である。
「それはね」
「そうだったんだ」
「だから私は今」
真理子は言葉を続けていく。
「満足できたのね」
「実は僕もね」
保正もここで彼女に言ってきたのだった。彼女と同じく鏡から彼女を見ながら。そのうえで話すのだった。
「満足しているよ」
「私だから?相手が」
「そうだよ。またね」
「ええ、またね」
二人でまた言っていく。
「こうしよう」
「そうね。夫婦だし」
二人でこう言い合うのであった。真理子は今まで気付いていなかった自分自身に気付いただけでなく夫の想いにも気付いた。それは夫も同じだった。結果として二人の絆はさらに強く確かなものになった。淫らな夢からはじまったものであってもである。
正夢 完
2009・11・9
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