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あんな感じになったんじゃない?」と言ったのもうなずける話である。

 そんな小波はしばしの間、珍しくうつむいていたが、ふいに顔を上げて呟いた。

「……俺はさ、今回の事件で、なんか気が付いた気がするんだ」
「何に……?」
「大切なこと」

 ふっ、と、穏やかな表情になる小波。そこには空気を読まないじゃじゃ馬の姿ではなく、本当に何かを得た、一人の人間の姿があった。

「ずっと、自分が今いる世界は無意味だと思ってたんだ。変わらない周囲、変われない自分。そんなの下らないって。だったら他の世界に渡ってしまえばいい、と思ってた。
 けどさ、清文、言ったろ。『前に進むために変わるんだ』って」
「……ああ」

 今となってはもう懐かしい、半年以上前の《白亜宮》事件の最終局面で――――清文が、その長たる少年神、《主》に向かって言い放った言葉だった。

 あの時は心の奥からこみあげてくる何かを口にしただけだったのだが……いや、だからこそ。小波の中に、何か大きな変化をもたらしていたらしい。

「その時にさ――――気が付いたんだ。無意味な世界が先に在るんじゃなくて、それが有意なのか無意味なのか、俺達自身で決められるんだ、って。だから、もう……前みたいに、ヘンに必死にならなくて済む」

 そう言って、安らかに頷く小波を見て――――


 清文は、感動どころか強烈な違和感を覚えた。

「……あんたには似合わないよ。やっぱり姉貴は、馬鹿みたいに騒いでるのが一番似合う。だってそれが姉貴だろ? ヘンに変える必要はないと思うよ。時間をかけて、変わっていけばいい……というか、俺の力ってそう言うのだから」

 そう、と言えばいいのか。ところで、と言えばいいのか。

 あの事件以後――――清文には、いまだに《異能》が残ったままだった。一体何の間違いなのか、肉体能力まで強化されてしまっており、箸やスプーン、フォークを粉々に砕いてしまうという事が一度だけあり、大いに困った。

 その際には《白亜宮》で心意の手ほどきを受けていたらしいウォルギルと、その上位技術である《自在式》に多少通じているハクガが手助けをしてくれたため、今現在は何とか調整できているのだが。

 因みに同じく、いわば《覚醒》してしまったキリトの方でも、こちらは手助けをしてくれる仲間がいないが故か、皿を割ったり箸を壊したり、一度何て鉄パイプを間違って破壊してしまっただかで大騒ぎになったらしい。まぁ今はハクガが向こうにいるので、そもそも《白亜宮》の関係者だったらしい鈴ヶ原の家に出入りすることで、制御の術を学んでいる最中らしい。ラースに正式に配属されるまでに自由にコントロールできるようになればいいのだが。

 というわけで、清文が小波にその違和感を訴えた結果。

「……
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