トワノクウ
第二十一夜 長閑(一)
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怯えたり面白がったりする学童らに遠巻きに観察されつつ待っていると、奥から男が一人、走って出てきた。悪い言い方で恐縮だが、眉が太い以外に特徴のない普通の男だ。
「露草……! おま、なんだよ、いつ意識……いや、とにかく元気んなってよかったぜ!」
「平八――」
では、彼が噂の平八なのか。
梵天に露草の記憶を視せられてはいたが、すぐには分からなかった。平八はワイシャツにサスペンダーつきズボンという出で立ちで、髷は帽子に隠れていたからだ。
露草はつかつかと、感極まった様子の平八に歩み寄る。
「おいてめえ」
「おうよ!」
感動の再会――かと思いきや、露草はめいっぱい平八を殴り飛ばした!
「阿呆かてめえ、人間が妖庇ってどうすんだ! 身の程弁えろ!」
「だだだってよお〜、ダチが危ねえ目に遭ってりゃあ普通はああすんだろ!?」
「知ったこっちゃねえよ!」
くうは唖然とそれを見守るしかなかった。
(何この人、ここまで来てツン全開? どんだけ照れ屋さんなんですか)
「ところでよ、露草、そこの異人さん誰なんだ? お前の仲間か?」
再会の儀式(露草の照れ隠し)を終えた平八がくうに寄ってきた。そうだ、人から見ればくうも充分に異人なのだった。
「梵が連れてきた新入りだ。混じり者だが相当強いぜ」
「妖なのか?」
どう答えようか。元人間だが今は妖の体なのだし、しかし精神は人間的だし。
「篠ノ女空と申します。はじめまして、平八さん」
とりあえず名乗る。ドレスを摘み上げて膝を折る西洋風の挨拶をした。
「あ、こりゃごていねいに……、篠ノ女?」
平八は目を白黒させた。この人もなのか。
「父は篠ノ女紺といいます。ご存知ですか?」
「ああ、むかし長屋仲間だったんだけどよ……ってええええええ!? あいついつの間に所帯持ったんだ!? しかもこんなでっけえ子どもこさえるなんざ!」
新鮮な反応だ。梵天も空五倍子も露草もくうが紺の実子と確定事項として話していたものだから、よけいに。
「彼岸では時間が速く過ぎるんです。ですから父も結構な歳なんですよ」
「はー、こりゃたまげた。まさかあの紺がなあ。相手の女どういう人なんだ? あの紺に嫁入りするなんざ、よっぽど肝っ玉据わったお人なんじゃねえか」
えーと、とくうは考える。篠ノ女萌黄。旧姓千歳萌黄。くうが生まれる前に、仮想現実世代の礎を築いた視覚娯楽分野の金字塔企業、千歳コーポレーションの令嬢――と言っても平八には分かるまい。
「姐さん女房、ってやつですかね。年上ですし。昔ちょっと大きな事件に巻き込まれたんですが、その時お父さんに助けてもらったのが縁で付き合いができて、結婚したんです
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