断章1:高町なのは
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言葉とともに腕を握る手の力からゲオルグの意志の強さを悟ったなのはは
言葉すくなく頷くと屋上に向かって飛んで行った。
その背中を見送りつつゲオルグは嘆息する。
《マスター、些か強く言いすぎでは?》
「いいんだよ。 あれくらい言っとかないとアイツはすぐ無理するんだから」
レーベンの問いかけにゲオルグは言葉尻だけは当然とばかりに答える。
だが、その表情は苦々しく、声色も吐き捨てるようなものであった。
《なるほど》
その態度に込められたゲオルグの心情を理解したレーベンは短く応じる。
すると、ゲオルグはもう一度嘆息してから厳しい表情を浮かべる。
「さてと、それじゃあ俺も行きますかね。 頼むぞ、レーベン」
《お任せ下さい、マスター》
そしてゲオルグは警防署の建物に向かって走り出した。
その後20分ほど経って特別救難隊と緊急医療隊が到着するまでに、
2人はそれぞれ5人以上の重傷者を救出し、内部構造の崩壊箇所についても
可能な範囲ではあるが調べていた。
そしてその結果を特別救難隊の隊長に伝えると、なのはは再び屋上へ
ゲオルグは特別救難隊と同行して再び建物の中に入っていった。
結局、消火・救出作業にはそこからさらに1時間ほどの時間を要した。
警防署で勤務していた局員300名のうち269名が無事に救出された。
言いかえれば殉職者は31名にのぼった。
さらにたまたま付近を通りかかった5人が巻き添えになり、
爆発事件による犠牲者は36名となった。
決して少ないとはいえない人命が損なわれた。
だが後日、事件の検証を行った結果、爆発発生直後のなのはやゲオルグによる
活動がなければ、犠牲者は少なくとも2倍にもなったであろうという結果が出た。
そしてそのなのはとゲオルグであるが、救助活動が終わったところで
揃って特別救難隊の隊長と短い会話を交わしたあと、その場を離れるべく
並んで歩きだした。
「あーもう。とんだ休日だよ、まったく!」
不機嫌そうに声を上げるゲオルグの肩をなのははポンと叩いた。
「まあまあ。特救隊の人も感謝してくれてたんだし・・・」
そう言って苦笑するなのはであるが、ふと何かを思い出したように"あっ"と
声をあげると足を止める。
「ん? どうした、なのは?」
隣を歩いていたはずのなのはがいないことに気付いたゲオルグが振り返る。
「あ・・・うん。 なんでもないの、ごめんね」
ゲオルグの言葉に答えてから、なのはは小走りにゲオルグのもとへと駆け寄る。
そしてゲオルグの隣で一瞬足を止めかけてから、ゲオルグの前に回り込み
ゲオルグと向かい合ってにっこりと彼に向かって笑いかけた。
「あ? なんだよ、なのは?」
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