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豹頭王異伝
暁闇
キタイの情勢
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頭を優しく撫でる中原の守護者。
 ドールに追われる男は軽く頷き、星の光を髣髴とさせる慧眼を閉じる。
 炯々と輝き叡智を湛える瞳孔が煌き、双つの水晶体から鮮烈な白光を放出。
 グインの裡に或る記憶が甦り、ヒプノスの術を用いた怨霊達の伝言が再生された。

 ドールに追われる男、イェライシャも夢の回廊を経て接触した際の思念波を補足。
 パロ魔道師ギルド特命部隊の上級魔道師ダンカン、ゴール以下20人の凝縮された念を解凍。
 上級魔道師ギール、下級魔道師ディノン、コームの面に深甚な衝撃が疾った。
 己を斃した闇の司祭グラチウスに対する恨み、怨念が存在し続ける力の拠り所ではあるが。
 使命を果たせず異国の地に果てた魂魄達、地縛霊と化した同胞の集団念波が真実を告げる。

 キタイ辺境にて謎の竜王ヤンダル・ゾックの王位簒奪、非人間的な圧制と虐殺の一旦は垣間見た。
 情報収集の使命が優先する為、途中経過を報告せず先を急ぎ何の情報も伝えられなかったが。
 沈黙を守る謎の鎖国、東方の大国キタイへ内情を探る為に派遣された魔道師達。
 はざまの世界、幽冥界に住む同志から託された《想念》と《伝言》が響き渡る。
 中原に迫る未曾有の危機を察知、母国パロの行く末を案じる愛国者の念は一段と強烈であった。

 消息を絶った特命部隊の中には先輩や弟子、同期の魔道師も含まれる。
 パロの魔道師達は動揺を禁じ得ず、常人には聴き取れぬ波長の絶叫を迸らせたが。
 イェライシャは後輩達の呻吟、感情の大波を鷹揚に受け止め微笑。
 後輩達の捧げる真摯な感謝の念に、温和な表情で応えた。

(豹頭王は帰国後に彼等の伝言を書状に記し、既に知らせておるかとも思うたが。
 わしも異国の地に果てた魔道師達から直接、パロの同胞に伝言を届ける約束をしたでね。
 魔道師ギルドとやらに期待はせぬが、死して尚も祖国を案じる勇者達の想いは確かに伝えた。
 キタイを蹂躙する竜王と戦い、豹頭王を援ける者は儂の味方でもある。
 御主達の念も未熟ではあるが、立派に成長する可能性を秘めておる。
 おや、吟遊詩人殿も勇者達の魂に贈り物を捧げたいと見えるな)

 イェライシャの心話を受け猫目石の如き豹眼、トパーズ色の瞳に澄んだ光が射す。
 涙を瞳に湛えた吟遊詩人が視線の先で、愛用の楽器(キタラ)を掲げた。
「キタイから遙々来てくれた賓客、パロの魔道師達への餞と云う訳か?
 良かろう、歌ってくれ。
 ケイロニア訪問以前の放浪中に知り合った我が友、旅芸人の吟遊詩人マリウス殿」

 数万の兵士達が口を閉ざし、興味津々の内心を押し隠しながら見守る中で。
 光と闇を繋ぐ運命の王子、アル・ディーンが愛用の楽器を奏でる。
 グインが鬼面の塔に乗り込む直前、即興で創られ青鱶党の少年達が滂沱
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