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或る皇国将校の回想録
第一部北領戦役
第十ニ話 最後の転進 最後の捨石
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にも医学的にも生存することに執着した人間であり、情に厚く時には偏執的なまでに義理堅い面もあったが、けして自ら捨て石となろうとする人間では無いと診断していた。

 ――いや、あいつが死んだと決まったわけではないか。
預けられた書簡は、彼の祖父――当主に宛てられている。
 ――何が書かれているのだろうか。祖父への遺言? それとも生還した後への布石?
彼奴は何を考えてこの文を書いたのだろう?

――いや、今考えることではないか。今は一刻も早く内地へと帰還しなくてはならない。
 ――命令は下されているのだから


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