第3部 始祖の祈祷書
第1章 アンリエッタの決断
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タは涙を拭い、首を振った。
「それはあなたが持っていなさいな。せめてものお礼です」
「こんな高価な品をいただくわけにはいきませんわ」
「忠誠には、報いるところがなければなりません。いいから、とっておきなさいな」
ルイズは頷くと、それを指にはめた。
その様子を見て、ウルキオラはウェールズの指から抜き取った指輪のことを思い出した。
右ポケットに入ったそれを取出し、アンリエッタに手渡した。
「ウェールズの指輪だ」
アンリエッタは、その指輪を受け取ると、目を大きく開けた。
「これは、風のルビーではありませんか。どうして……」
「ウェールズの亡骸から拝借してきた。お前が持っていたほうがいいだろうと思ってな」
ルイズはウルキオラが持っていることに驚いた。
そして、ウルキオラがそんなことをしたことにも驚いた。
アンリエッタは風のルビーを指に通した。
ウェールズが嵌めていたものなので、アンリエッタの指にはゆるゆるだったが……、小さくアンリエッタが呪文を呟くと、指輪のリングの部分が窄まり、薬指にぴたりとおさまった。
アンリエッタは、風のルビーを愛おしそうに撫でた。
それからウルキオラの方を向いて、はにかんだような笑みを浮かべた。
「ありがとうございます。ウルキオラさん」
寂しく、悲しい笑みだが、ウルキオラに対する感謝の念がこもっていた。
「あの人は、勇敢に死んでいったと。そう言っていましたね」
「ああ」
ウルキオラは頷いた。
アンリエッタは指に光る風のルビーを見つめながら言った。
「ならば、私は……、勇敢に生きてみようと思います」
王室から、魔法学院に向かう空の上、ルイズは黙りっぱなしだった。
ウルキオラはタバサが持ってきてくれた『鬼道全集』を開いていた。
そんな空気に耐えかねて、キュルケが口を開いた。
「まさか、あの子爵が裏切り者だったなんてね」
キュルケはウルキオラを、熱っぽい視線で見つめた。
「でも、ダーリンがボコボコにしてたわね…」
キュルケは、ウルキオラに見せられた映像を思い出しながら言った。
ウルキオラは、本から目を離さずに頷いた。
「本当にすごかったわ!さすがは『イーヴァルディー』ね!」
ウルキオラは、キュルケの言葉に本から視線を外し、キュルケを見つめた。
ルイズにタバサ、ギーシュも驚いた顔でキュルケを見つめた。
でも、タバサだけは驚き方が尋常ではなかった。
「そういえば、ワルドに決闘を申し込まれたとき、物陰に隠れていたな」
ウルキオラは冷静に答えた。
「あら、気づいてた?」
今度はキュルケが驚いた顔をした。
「ま
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