第3部 始祖の祈祷書
第1章 アンリエッタの決断
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ったなんて……。まさか、魔法衛士隊に裏切り者がいるなんて……」
アンリエッタは、かつて自分がウェールズにしたためた手紙を見つめながら、ポロポロと涙を零した。
「姫様……」
ルイズが、そっとアンリエッタの手を握った。
「私が、ウェールズ様のお命を奪ったようなものだわ。裏切り者を、使者に選ぶなんて、私はなんということを……」
ルイズは首を振った。
「ウェールズ皇太子は、もとよりあの国に残るつもりでした。姫様のせいじゃではありません」
「あの方は、私の手紙をきちんと最後まで読んでくれたのかしら?ねえ、ルイズ」
ルイズは頷いた。
「はい、姫様。ウェールズ皇太子は、姫殿下の手紙をお読みになりました」
「ならば、ウェールズ様は私を愛しておられなかったのね」
アンリエッタは、寂しげに首を振った。
「では、やはり……、皇太子に亡命をお勧めになったのですね」
悲しげに手紙を見つめたまま、アンリエッタは頷いた。
ルイズは、ウェールズの言葉を思い出した。
彼は頑なに「アンリエッタは私に亡命など勧めていない」と、否定した。
やはりそれは、ルイズが思った通り嘘であったのだ。
「ええ、死んでほしくなかったんだもの。愛していたのよ、私」
それからアンリエッタは、呆けた様子で呟いた。
「私より、名誉のほうが大事だったのかしら」
ルイズは、違うと思った。
名誉を守ろうとして、ウェールズはアルビオンに残ったわけじゃない。
彼は、アンリエッタに迷惑をかけないために……ハルケギニアの王家が、弱敵ではないことを反乱軍に示すために、アルビオンに残ったのだ。
「姫様、違います。皇太子は、姫様や、このトリステインを守るために、あの国に残ったんです。ウルキオラにそう言われました」
そう、ウルキオラが言っていたことを思い出しながら、ルイズは言った。
「私を守るために?」
アンリエッタはウルキオラに向かって言った。
「自分が亡命すれば、反乱軍が攻め入る格好の口実を得たことになる。それに、アンリエッタ自らウェールズに亡命を勧めたことがどこからか漏れれば、それこそゲルマニアとの同盟が白紙になる。ウェールズはそれを危惧していた。まあ、案の定、ワルドが裏切り者だったことを考えると、ウェールズの考えは理にかなっていた……ということだろう」
ウルキオラは淡々と答えた。
「現に、ワルドから『レコン・キスタ』に亡命の件が漏れることはない」
「ウェールズ様は…そこまで…私のことを…」
アンリエッタはその場に泣き崩れた。
ルイズはポケットから、アンリエッタにもらった水のルビーを取り出した。
「姫様…これ、お返しします」
アンリエッ
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