第3部 始祖の祈祷書
第1章 アンリエッタの決断
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隊長は口ひげをひねって、少女を見つめた。
ラ・ヴァリエール公爵夫人なら知っている。
高名な貴族だ。
「ラ・ヴァリエール公爵様の三女とな」
「いかにも」
ルイズは、胸を張って答えた。
「なるほど、見れば目元が母君そっくりだ。して、要件を伺おうか」
「それは言えません。密命なのです」
「では、殿下に取り次ぐ訳にはいかぬ。用件も尋ねずに取り次いだ日にはこちらの首が飛ぶからな」
困った声で、隊長が言った。
「なら、アンリエッタ姫殿下に『ルイズとその使い間が戻ってきた』と伝えろ。そうすればわかる」
風竜の上から、空中を歩きながら、ウルキオラがそういった。
隊長は、空中を歩いているウルキオラに驚愕したが、ウルキオラが言っていることももっともなので、そのようにすることにした。
「あいわかった。では、私が姫殿下にそのようにお伝えしよう」
「ありがとうございます」
ルイズは深々と頭を下げた。
「お前たちは、私が戻るまでこの者たちを見張っていろ」
「はっ!」
暫くすると、宮殿の入り口から、鮮やかな紫のマントとローブを羽織った人物が、ひょっこりと顔を出した。
中庭の真ん中で囲まれているルイズの姿を見て、慌てて駆け寄ってくる。
「ルイズ!」
駆け寄るアンリエッタの姿を見て、ルイズの顔が、薔薇を撒き散らしたようにぱぁっと輝いた。
「姫様!」
二人は、一行と魔法衛士隊が見守る中、ひっしりと抱き合った。
「ああ、無事に帰ってきたのね。うれしいわ。ルイズ、ルイズ・フランソワーズ……」
「姫様……」
ルイズの目から、ぽろりと涙が零れた。
「件の手紙は、無事、このとおりでございます」
ルイズはシャツのポケットから、そっと手紙を見せた。
アンリエッタは大きく頷いて、ルイズの手をかたく握り締めた。
「やはり、あなたは私の一番のお友達ですわ」
「もったいないお言葉です。姫様」
しかし、一行の中にウェールズの姿が見えないことに気づいたアンリエッタは、顔を曇らせる。
「ウェールズざまは、やはり父王に殉じたのですね」
ルイズは目を瞑って、神妙に頷いた。
「して、ワルド子爵は?姿が見えませんが。別行動をとっているのかしら?それとも……、まさか……、敵の手にかかって?そんな、あの子爵に限って、そんなはずは……」
ルイズの表情が曇る。。
変わりに、ウルキオラが言った。
「ワルドは裏切り者だった」
「裏切り者?」
アンリエッタの顔に、影がさした。
そして、興味深そうにそんな自分たちを、魔法衛士隊の面々が見つめていることに気づき、アンリエッタは説明した。
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