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異伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(ヴァレンシュタイン伝)
異聞 第四次ティアマト会戦(その6)
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「ラインハルト様、コンラート・ヴァレンシュタイン、ヘレーネ・ヴァレンシュタインを殺したのはカストロプ公かもしれません。カストロプ公はリメス男爵家の騒動を隠れ蓑にキュンメル男爵家の財産を狙った。そしてその罪をヴァルデック男爵達に押し付けた……」
「馬鹿な……」

あの事件の真犯人はカストロプ公、財務尚書だというのか……。信じられない思いでキルヒアイスを、そしてフレーゲル男爵を見た。キルヒアイスは暗い表情を、そしてフレーゲル男爵は嘲笑を浮かべている。そして身を乗り出し囁くように俺に話しかけてきた。

「その通りだ。確証は無いがヴァルデック男爵達はヴァレンシュタイン夫妻を殺していない可能性が有る。そう考えるともう一つの可能性が出てくる……」
「可能性とは」
「似ていると思わぬか?」
「似ている?」
フレーゲルが片頬を歪めた、冷笑だろう。腹が立つよりも嫌な予感の方が強かった。

「鈍い奴め、今回の一件にだ。叔父上もリッテンハイム侯も今回の一件には無関係だ。しかし卿が死ねば当然だが疑いは叔父上達に向く。否定すればするほど疑いは叔父上達に向くだろう。そして真犯人は素知らぬふりをして裏で笑っているだろうな」
「!」

顔が強張るのが分かった。有り得ないとは言えない、しかし腑に落ちない点は有る。
「だが何故だ? 何故カストロプ公はそんな事をする?」
俺の声も何時の間にか囁くような声になっていた。そしてフレーゲル男爵が低く笑う。

「とことん鈍い奴だな」
「何だと!」
「分からんか、カストロプ公は卿らを怖れたのだ。卿、ヴァレンシュタイン少佐、ルーゲ伯爵、マリーンドルフ伯爵、ヴェストパーレ男爵夫人、ヴァルデック男爵、コルヴィッツ子爵、ハイルマン子爵、リヒテンラーデ侯爵、そして……」

「そして……」
フレーゲル男爵が薄く笑いを浮かべた。
「そして、グリューネワルト伯爵夫人……」
「……馬鹿な」
「カストロプ公は卿らの繋がりを怖れたのだ」
呆然とする俺とキルヒアイスの前でフレーゲル男爵だけが声を上げて笑っていた……。


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